★――――――――――――――――――――――――――

◆「今後の取り組みのお伺い」


お世話になります。
現在うちのグループでは、ある顧客から提案をする機会をいただいており、実際にどのように取り組むかは決まっていない状況ですが、ある程度早いうちに具体的なものを提案したいと考えており、様々な可能性を検討しています。
案件的には、多くの担当者が関わり複雑で、しかも高いスキルを要求されることが考えられ、かなり大規模で、難しいプロジェクトになると思われます。
本件につきまして、○○さんにご協力いただきたく、取り急ぎご連絡いたしますので、何卒よろしくお願い致します。
――――――――――――――――――――――――――★


実際に、こんなメールを書く方はいないと思いますが、このメールを受け取ったら、多分困りますね。

昨日の記事は、ちょっと気になったメールを引用して、どのようなポイントに気をつけたらわかりやすいメールになるかをリストアップしてみました。

本日はその続きで、具体的にどこをどのように変えたらいいのかを5つのポイントに絞って添削してみたいと思います。

このポイントは、「日本語スタイルガイド」を参考にして管理人が独自にまとめたものです。
「日本語スタイルガイド」などを参照すると、数十項目もの観点が事細かに書かれています。業務をする中で、毎回、数十項目もの確認をしながらやっていくのは無理です。

私は主にこの5項目のみを意識してます。



■構成を考える


メール(社内文書)を書く時に注意するべき文章構成上のポイントは

 ・文章全体を要約した最も重要なことを本文冒頭で書く
 ・1つの文では1つのこと(一文一意)を40~50字以内で書く。
 ・できるだけ書かない努力をする
 ・内容がイメージできる見出しやタイトルにする
 ・行間をあける

です。

◆文章全体を要約した最も重要なことを本文冒頭で書く


池上彰著の『わかりやすく伝える技術』では、この文を「リード」表現してまして、「リード」を書くことを「地図を渡す」と表現しています。 重要なことを要約して書くことで、文章の全体像を読む側に示し、後に続く説明の理解を助けます。

社内のすべての人が 送った文章を全部読んでくれるとは限りません。特に忙しい人に判断を仰ぐような場合、先頭に重要なことを書くことで読む側の負担を減らし、正しい判断へと導きます。

首記の例文メールだと 以下のような感じでしょうか?

★――――――――――――――――――――――――――
お世話になります。
今日は、私たちのグループに一時的に技術者を派遣いただけないか検討いただきたく メールさせてもらいました。
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◆1つの文では1つのこと(一文一意)を40~50字以内で書く。


文が長くなればなるほど、いろいろな係り受け(主語と述語だったり、名詞と形容詞だったり)が生じます。 この複数の係り受け(複文)は、誤解を生む元になります。

 1つの文では、1つのことを書きましょう

おなじく池上彰著の『わかりやすく伝える技術』では、「そして」や「だから」などの接続詞を使わないことが挙げられています。これも、文を長くしてしまう要因になりますね。

首記の例文メールだと 以下のような感じでしょうか?

★――――――――――――――――――――――――――
私たちのグループでは、クライアントへのプレゼンテーションを計画しています。
本件は、必要な技術もクライアントの要求も非常に難易度が高いため、プレゼンを成功させるための対策が必要です。

○○さんのチームの技術者は有能で経験もあり、私の部門に不足している技術も保有しています。
○○さんチームの技術者にサポートいただくことで、このプレゼンを成功に導けると考えています。
つきましては、以下の条件で技術者の派遣を検討いただけませんでしょうか?
――――――――――――――――――――――――――★


◆できるだけ書かない努力をする


社内文書ですから、読む側は、読む側にとって必要なことをインプットして、次の行動を判断したいわけです。 書く側の事情や背景を延々と書かれても読み手にとっては面倒なだけです。

また、書けば書くほど大切なことが他の文に埋もれてしまいます。

いろいろ書きたいときは、先ず、大切なことを書いて、本文後半で書いたほうがよいですね。

基本的には、読む側にとって不要な文章を排除することで、よりわかりやすく伝えることができます。

箇条書きなどを使って、文にしない方法も有効です。

こんなふう。

★――――――――――――――――――――――――――
期間    : 8月上旬から10月上旬
必要人数  : 2名
必要な技術 : Java
希望    : プロジェクトマネージメント経験者
――――――――――――――――――――――――――★


文にしてしまうことで、ライティング技術が必要になり、結果、わかりやすく伝えることを難しくします。 文は極力最小限にするのが、正しく伝えるためには必要なのかもしれません。


◆内容がイメージできる見出しやタイトルにする


読む側が一番初めに目にするのは、タイトルや文章をまとめる見出しです。

冒頭のリードと同様に、タイトルや見出しで文章のまとまりをわかりやすく伝えるのは重要です。
文章のまとまりをイメージできるような見出しやタイトルを考えましょう。

首記の例文メールだと 以下のような感じでしょうか?

★――――――――――――――――――――――――――
「技術者派遣検討のお願い」
――――――――――――――――――――――――――★


◆行間をあける


首記の文章が読みにくいのは、文章の塊がなく、全体の意味のブロックが分かり難いということもあるでしょう。

この記事でも1行或いは数行で空白行を入れています。
これはある文が複数の文で構成されて、それが更に大きな意味を持っているので、その単位で空白行を入れています。

これが不適切だと、すごく読みにくい文章になります。

さらに空白行や空白(段付)は全体からの独立をイメージさせるので、強調効果があります。
この記事でも時々箇条書きは1~2個の空白文字を置いて書いているのと同じです。

★――――――――――――――――――――――――――
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

   いいいいいいいいいいい
   いいいいいいいいいいい
   いいいいいいいいいいい
   いいいいいいいいいいい
   
うううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう
――――――――――――――――――――――――――★


と書くと、「い」の部分がすぐに「構成が違う」と認識できますよね。


■まとめ


以上をまとめると以下の様な文章になります。

★――――――――――――――――――――――――――
「技術者派遣検討のお願い」

○○さん

お世話になります。□□部の▲▲です。

今日は、私たちのグループに一時的に技術者を派遣いただけないか検討いただきたく メールさせてもらいました。

私たちのグループでは、クライアントへのプレゼンテーションを計画しています。
本件は、必要な技術もクライアントの要求も非常に難易度が高いため、プレゼンを成功させるための対策が必要です。

○○さんのチームの技術者は有能で経験もあり、私の部門に不足している技術も保有しています。
○○さんチームの技術者にサポートいただくことで、このプレゼンを成功に導けると考えています。
つきましては、以下の条件で技術者の派遣を検討いただけませんでしょうか?

  期間    : 8月上旬から10月上旬
  必要人数  : 2名
  必要な技術 : Java
  希望    : プロジェクトマネージメント経験者

お手数ですが、

  ★来週末までに★


お返事をいただけるとありがたいです。
よろしくご検討ください。
――――――――――――――――――――――――――★

いかがでしょうか。
もしあなたがこのメールを受け取ったとしたら、こちらのほうが首記のメールよりわかりやすいと思いません?
まあ、それを業務として受けるかどうかは別物ですが…。

■おまけ:小見出しを付ける


最後に、もしこれがスクロールしないと読めないような長文の場合には、適当なところで「表題」を付けます。

以下の文字は目立つので表題には使いやすいです。

  ■、◆、●、★

首記のメール程度の長さであれば必要性は低いですが。

■参考図書 日本語スタイルガイド

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