面接などで、過去の経歴・実績を述べるときに

 「問題点を関係者で共有して、一丸となって取り組みました」

みたいに発言する人がいます。

■共有した?



なるべく面接の時にこういう問題点に突っ込まないようにしてますが、どうしても抽象論しか言えない人にはツッコミを入れる場合があります。

 「『共有した』って言われたけど、それは何をどうしたの?」

で、大体の人は

 「ミーティングで『こういう問題点がある』と話しました」
 「問題点についてレポートを書いて関係者に送付しました」

的な答えが返ってきます。

それが共有??

「共有できた」という状態をどう定義しているか、すごく問題がありますね。

■ITで共有できる?


よくIT(ネットワークサーバ)を入れるメリットとして、「情報が共有できる」みたいなものがあります。最近ならWebやクラウドでしょうか。こういうITサービスを売り込まれるときにも、同じような発言を聞きますね。

  だれでも見えるところに資料を置くことが共有化?

みたいな気がしません?

■共有の意味


仕事で情報を共有しているというのはどういう状態でしょうか。
それは、共有している誰に聞いても

 同じ答えが返ってくる

ということではないでしょうか。

たとえば、部門の目標で「売上20%増」という目標があったとしたら、「どうやって売上を伸ばすのですか?」と聞けば、新人から部長まで

 「顧客の訪問件数を増やして、より深く顧客の課題を知り、それによって提案を増やすことで、購買頻度を上げることです」
 「なぜ20%なのかというと、×××だからです」

と同じ答えが返ってきてはじめて、「共有できている」といえるのではないでしょうか。
もちろん、その行動をしていてのことですが。

以前、「私たちは、まごころをこめたサービスを行い、お客さまのご期待を実現します」という理念を掲げているJRで、乗り換え途中駅で忘れ物をした時にその駅に連絡したら、「当駅の遺失物センターまで来てください。でも遺失物センターは駅の外にありますので、今の切符は途中下車扱いですので、買い直してください。」と言われて困り果てたことがあります。これが「お客様の期待を実現すること?」と思っちゃいましたね。
これは「共有できている」とはいえないのではないかと。

あなたの持っている情報は共有できているでしょうか?


■「共有した」を使う



「共有した」と発言した時には、それを具体的な行動として発言しないといけません。
面接ではこういう抽象的な発言を「いい加減」に使うと突っ込まれます。突っ込まれて自分なりの解釈と行動が同じであればいいですが、

 ・その意味を深く考えていない
 ・自分の解釈通りの行動ができてない

のいずれかである場合、NGを食らう事になります。

「共有した」と発現する以上、「その問題点に対して誰もが同じ解釈をした」程度の実例は示せないといけません。たとえば冒頭の回答であれば、

 ・問題点をどのように見るのかについて、意見が一致するまで議論をした
 ・その結果、問題の役員への説明は××さん、問題の対策を現場にプレゼンするのはは○○さん、問題の対策は活動は▲▲さんという風に分担することができた

くらいは言ってほしいものです。

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