この記事を読んでみえる方は、多かれ少なかれ、「提案書」を作ったり、「書類」とは言えないまでも、なんらかの「提案」を上司に出すことがあるかと思います。

その「提案」はいきなり上司に出すことはなくて、多くの場合口頭ベースで上司から OK をもらった上で、書類にして上司に提案するのでしょうけど、これが食らうのですよ、ダメ出し


内心は、「このまえこれでいいって言ったじゃない…ブツブツ」って思いながら、「わかりました。明日までに修正します」とか「考えてきます」と言うのですけど、あんまり気持ちよくはないですね。

■企画は叩かれてこそ


最近読んだ本で、こんな本があります。

    『読者ハ読ムナ(笑)

また、妙なタイトルの本ですが…。

本書は著者の漫画家・藤田和日郎氏のところに弟子入りした新人漫画家を(新人ではなく本物の)漫画家に育てていくというストーリーで、いろいろなことを教えていくというストーリー形式になっています。

漫画を描いて持ち込む際には、

 ・作品から自分を引っぺがして吟味する
 ・描き終わったら作品から一歩ひいていったん離れる

ということが大事なのだそうです。

自分でマンガを書くほどの人なので、とうぜんその作品には思い入れがあります。ただ、その思い入れをそのまま持ち込んでも商業ベースにはのりません。客観的にそれが読者にどのように受け取られるのかを考えないと、単なる自己満足で終わってしまいます。それではプロとは言えない、と。

その方法として提案されているのが

 映画の批評会をする

ことなのだそうです。

映画は当然自分の作品ではないので、冷静に批評ができますが、ポイントは他人がそれをどのように批評するのかを勉強することだそうです。

普通にサラリーマンが書く提案書や企画書も、当然自分が書いているので思い入れがあります。でもそれを自分自身で批評できるようになると、より完成度の高い提案書がかけるようになるかも知れません。
そのコツはこういうところにあるように思いました。

もうひとつ本書を読んで感じたのが今回のテーマ。

 週刊誌の作家は編集者に叩かれてこそ

ということです。


■新人作家は編集者に徹底的にダメ出しをされる


漫画誌の新人賞などを取ったような人が本格的に漫画家の世界に入ると、新人賞を取った作品であっても、その後に書いた作品であっても徹底的にダメ出しをされるそうです。

そんなときに

 「なんでこんなに叩かれるんだ!?」

と思ってしまってだめになっていく人が多いそうです。もちろん、新人賞を取れるような人は当然ながら「新人の中では優秀」です。ただし、審査をする人は、その作品自体が世の中のレベルで優秀だとは思っていなくて、「伸びしろがある」ということを買って賞を出しているそうです。

あくまでも、「素材として良い可能性がある」と言っているだけで、その作品が良いと言っているわけではない。

そのダメ出しをちゃんと受け止めて、自分の糧にしていける人だけが生き残れる。編集者は「新人賞は新人賞。雑誌に載せるときには世の中の基準」で考えているので、基準を満たさないところは直さない限り受け入れてはくれないし、編集者はそこに妥協をしたら、雑誌の売上に響いてしまうわけですね。

だから、「壁」と言われようが、「門番」と言われようが、ダメ出しをするそうな。

■上司が認めた提案書はダメ出しをされるもの


同じことは、上司から書くように指示のあった企画書であっても同じかな~、と。

上司はその企画の骨子には「見どころがある」と思っているかも知れません。あるいは、その企画はどうでも良くて、提案している本人に将来性があると思っているのかも知れません。

だからこそ、「よし、一度ちゃんとした提案書にしてみろ」と言った可能性があります。

で、「おお、オレの企画が通りそうだ」「オレってやっぱり見る目があるよな~」とか天狗になって、提案書を持っていくと、ボロクソに言われて、「あのヤロー。この前は調子のいいことばかり言いやがって!!」になっちゃうわけです。

ただ、本書『読者ハ読ムナ(笑)』にあるように、「素材としての良さ」と「作品の客観的な基準との差」は別物です。

提案はあくまでも「素材」であって、素材は磨いたり叩いたりしないと、結局いいものにはなりません。

つまるところ、提案書というのは、自分が「よしこれで提出できる」と思ったところはゴールではなくてスタート地点。そこから、あちこちで叩かれて、ようやく使い物になるということですね。

それまでに心が折れてしまわなければ

■オマケ


本書のに書いてあるキーポイントは、目次を読めばだいたい分かるかも。

一部をご紹介します。

・みんなで映画を観て語る―「自分」と「自分の意見」を切り離す訓練
 映画を観て語り合うことが漫画家になる訓練になる理由
 他人事ではなく「友達が描いたネーム」へ意見を言うつもりで理屈を言語化しろ
 映画を観て語り合うことは、自分分と自分の作品を切り離す訓練になる
 ほかのひとの見かたを知ることは、おもしろさをつくる引き出しになる
・編集者との打ち合わせの仕方
 関係性をつくらないと、言われたか言葉は入ってこないんだ
 新人の武器は「質問すること」だからね
 何か言われたら反論しなくていいから「確認」しろ
・客観性を保っために、離れる
 削ることを受け人れられるかどうかで、新人が次のステッブに行けるかが決まる
・「なんで?」と徹底して聞け
・一度に全部を治す必要はない。言われたことに対しては優先順位をつけること
・アレモコレモと付け加えるのではなく、ひとつひとつの要素を煮詰める
・、般常識から人る。普通のリアクションをさせるいきなり
 「意外性」から人りちゃダメ。漫両は素直に考えんと
 新人は、読み切りを「はじめまして」の気持ちで描きな
 少年漫画の主人公は「いいやつ」にしときなよ!
 常識から人って、意外性を川意して、期待感の通り終わるのがべストだ
 弱音を吐くなら、 18 回ダメ出しされてから言え
 同人誌?持ち込んでうまくいってない時はおやめ
 編集者が作家に求めているのは「妥協」じゃなくて「改良」だ
 投稿者同士のウワサ話に惑わされるな。好きなものを描きな
 漫画は商売。自由にやれば誉めてもらえる場所しゃないぞ
・自分の予想とは違う方向からチャンスがやってくることもある
・高い目標からぶち当たっていくのがスジではあるわな
・「君だけのオリジナリティ」の見つけ方
 個性とは好きなもの
 外に答えを探すな。内を見つめろ
 漫画は、言語化!

漫画の仕事も、普通のサラリーマンの仕事も同じですね。




■参考図書 『読者ハ読ムナ(笑): いかにして藤田和日郎の新人アシスタントは漫画家になったか (少年サンデーコミックス〔スペシャル〕)




藤田和日郎が明かす新人漫画家養成術

「うしおととら」「からくりサーカス」「月光条例」そして「双亡亭壊すべし」で少年漫画界を熱く走り続ける藤田和日郎。
その仕事場からは数多くの漫画家が巣立った。
今回、藤田和日郎のアシスタントになった架空の新人漫画家が、連載を勝ち取るまでを描く体裁で、藤田氏が自身の漫画創作術、新人漫画家の心構えやコミュニケーション術を語り下ろしました。
藤田和日郎の初代担当者も新人漫画家の担当編集者として登場。

編集担当からのおすすめ情報
新人漫画家が直面する悩みに答えながら、漫画作りのノウハウも伝えていく実用的な漫画創作本です。





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●このテーマの関連図書


漫画家本vol.1藤田和日郎本(少年サンデーコミックススペシャル)

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ユリイカ2010年2月号特集=藤田和日郎『うしおととら』『からくりサーカス』そして『月光条例』・・・少年マンガの20年

10年大盛りメシが食える漫画家入門ふりかけ付き!(星海社新書)

スター・ウォーズに学ぶ「国家・正義・民主主義」岡田斗司夫の空想政治教室(SB新書)

荒木飛呂彦の漫画術(集英社新書)



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