多くの仕事の中で、自分の能力をフルに使わないといけない仕事は、自分の持っている専門知識を使って「ものごと」を分析して、その分析結果に基づいて次の行動につなげていくという作業なのではないでしょうか。


 「××について検討しなさい」
 「○○について調査しなさい」
 「○○の課題はどのように対応しようと考えるか?」

こんな課題が与えられた時に、上司をうならせる分析手法があります。
私はこれを

 ものの見方の定番

と呼んでます。

このシリーズ(最近多いなぁ)はこれらを一気に紹介します。

本日はその第 %%CT%% 回目。%%TITLE%% をご紹介します。


■ものの見方の定番パターン


ものごとをどのように捉えて検討を加えていくべきなのかという点について、私が定番にしているパターンを紹介していきたいと思います。

 ・カテゴリ
 ・主観と客観(主体と客体)
 ・時間と空間
 ・本質
 ・運動
 ・弁証法
 ・差異(否定弁証法)
 ・構造視点
 ・因果関係
 ・システム
 ・蟻の目 ・鳥の目 ・魚の眼

です。

これは私が書籍を読む中で、「こういう見かたをしなさい」「こういう分析をしなさい」という部分を見つけた時に、実際に「使える」と感じたものを記録したものなので、用語の使い方などが統一されてはいませんが、まぁコンサルタントではないので、統一性や一貫性などは気にせずに使ってます。

■複眼的思考


これらの定番パターンのトップに来る「ものの見方」は複眼的思考です。

これは、ちょっと別格なので定番には入れてません。この「ものの見方」は、

 定番パターンを1つだけ使ってはダメ

という意味で別格なのです。

つまり、これから説明する定番パターンを1つだけ使ってものごとを分析して満足してしまうと、報告時にそれ以外の見かたを提示されて、答えに窮するという場面が少なからずあります。
こういうことを避けるためには、ここで紹介するすべてのパターンを使って分析をして、その中で「こういう見かたが一番いい」と判断した上で、報告をするようにしないといけないということです。

たとえば、「新商品××の売れ行きが良くないのはなぜか」というテーマで報告しようとしたら、

 ・この商品のカテゴリはどのようなもので、どの様な強豪にさらされているのか(カテゴリ)
 ・会社の意図と市場の動きはどのように違ったのか(差異)
 ・どのような原因があるのか(因果関係)
 ・生産と販売の相互関係はどのようになっているのか(システム)
 ・市場環境、販売経緯、製品のユーザ評価(蟻の目 ・鳥の目 ・魚の眼)

など様々な「ものの見方」を使って分析しておいて、「ここがポイントだからこう報告しよう」と決めてかかると、それ以外の見かたを提示されても「そこは問題の核心ではありません」と説明(受け答え)ができるようになります。
上司や役員に報告の場面でやり込められ、「もう一度報告しなおせ!」と言われる多くのパターンは、このように「複眼的なものの見方」ができていないために、別の見方に対する対応ができないことによります。
※当然、「分析自体が甘い」というのは除外してますが。そこは完ぺきにできたとして。

では次回から、それぞれのパターンについて簡単な説明を加えていきたいと思います。

■■カテゴリ分けをする



■カテゴリ


「カテゴリ」とは日本語で言うと、「分類」ですね。

たとえば生物は、××属××科みたいに分類されることはご存知でしょう。たとえば人間は

 新口動物上門、脊索動物門、脊椎動物亜門、四肢動物上綱、哺乳綱、真獣下綱、真主齧上目、真主獣大目、霊長目、直鼻猿亜目、狭鼻下目、ヒト上科、ヒト科、ヒト亜科、ヒト族、ヒト亜族、ヒト属、ヒト

に分類されますね(長い…。Wikipediaより)。

こうした、対象はどのようなものに分類されるのかを考えることで、

 ・より高次のものの見方ができないか
 ・同じ分類にある別のものの事例が適用できないか

を考えることができるようになります。

例えば、「リンゴの販売方法」を考えるときに、他社のリンゴの販売の事例だけではなく、「果物」の販売方法の事例を考えることができれば、「みかん」の販売方法を応用できないかという考え方にも到達できます。
さらに、「植物」「食べ物」といった分類に展開すれば、数多くの事例を考えることができます。

■多次元構造で分類する


ここで、注意するべきは、分類は1次元ではない、ということです。上位の概念(カテゴリ)は複数個あります。

先ほどの人間は一直線に分類が出来上がっていますが、べつにその分類ではなく、

 「男と女」
 「キリスト教徒と仏教徒とイスラム教徒」
 「白人と有色人種」

でもなんでもいいわけです。

こうした多面的な分類方法を提示することによって、さまざまな可能性を考える事ができるようになります。

こういう多面的な分類方法というのは、どのようなカテゴリで分析・検討するのかによって結論や論理展開が変わってきます。
ということは、自分の論理をカテゴリによって展開しようとしたら、その選択したカテゴリが適切であることを保証する「なにか」が論点として必要だということです。

■認識論的カテゴライズ


もう一つ「カテゴリ」で重要なのが「量、質、関係、様相

哲学の世界ではカントが『認識論的カテゴリ論』が有名だそうです。
カントは人間が対象をきちんと認識するためのカテゴリとして、

 量、質、関係、様相

の4つの項目をあげているそうです。これはビジネスにおいてもわかりやすいので、私がカテゴリとして使うときには、わりとこの4項目を意識して使うようにしてます。

これは単純に言えば、これらは「ものごと」を理解するための「ものさし」に当たるものです。

ですので、この「哲学の世界におけるカテゴリ」は上記のように「人間の分類」といった汎用的なものではなく、あくまでも「認識するための分類表」である点は注意が必要です。

◆量


 「量」とは「多い/少ない、大きい/小さい」といったいわゆる、対象となるものごとが「どの位」なのかをはかるものです。
 ビジネスに携わるものとしては、この「量」は数字で表さないと、他の人と共通の認識を持つことはできませんので注意が必要です。

 カントは、量を単一性、多数性、全体性という性質で分類をしました。

◆質


 「質」はよく言われることなので、私がコメントすることはありませんが、「仕事の質」といったときに、それぞれの人がもつ認識はあるでしょうけど、同じく論理的に表す必要がある指標ですね。
 カントは、質を実在性、否定性、制限性という性質で捉えるとしているそうです。

◆関係


 これもコメントするまでもありませんが、同じようなものを並べた時に、それがどのような関係にあるのかを表す指標ですね。
 カントの言う関係には、実態と属性、原因と結果、相互作用で捉えることで認識がしているとのことです。

◆様相


 これはわかりにくいかもしれませんが、カントの説明によると可能性と不可能性、現存性と非存性、必然性と偶然性で捉えるとしています。
 単に、様相という単語から捉えるとすると、対象そのものの外観や形状、色などがありそうですが、その時に、ある色である場合と別の色である場合の2つの相反的な様相を捉えないと正しく認識ができないということでした(受け売りです)。

■測定可能であること


本記事は哲学を論ずるつもりはありませんので、これらそれぞれの意味については、自分に都合がいいように定義して使えばいいですが、ビジネスで使う場合には

 測定可能であること

を大前提に考えないといけません。

つまり、「何が」「どのように」「どのくらい」が言えないとそれぞれについて、納得感のある説明ができないということです。
長くなってしまうので、今回の記事はこの程度のご紹介にとどめておきます。

また機会があれば事例をご紹介したいと思いますが、要するには「自分が考える"質"とは××で、これはこのくらいです」と言えればいいので、(時と場合に応じて)勝手に定義して使ってますので、一定の解釈を私が持っているわけではありません。

■■主観と客観(主体と客体)


本日は「主観と客観(主体と客体)」についてご紹介したいと思います。

■主観と客観(主体と客体)


まぁ、それぞれの意味については、特別な単語ではありませんので、ここで説明するまでもありませんね。

ただ、これは業務における報告などで、私も時々指摘する(される)ことがありますが、ここが入り交じっている場合が少なくありません。

ここで述べるのは、主観と客観(主体と客体)という一対の概念です。「主観」「客観」という別々のものではなく、この2つを含むものごとの見方という意味で捉えていただきたいです。
※説明がヘタなのでわかりにくでしょうが…。その点はご勘弁を。

ここで、「主体と客体」という言い方は、私が哲学を勉強した時に学んだ表現方法なので、あまり一般的ではないかもしれません。
簡単には、「するもの=主体」「されるもの=客体」と考えればいいかと思います。極端には、「ひと=主体」「もの=客体」と考えていただければいいかと。
※哲学的には、「認識/知覚するもの」「認識/知覚されるもの」という意味で使うみたいですが。

■「主体と客体」の概念


トラブルの報告などで、焦っているとさっぱりわからない報告をしてしまう場合があります。

 「一体何が起きているのか、起きた事実だけを時系列で報告しなさい」

ということをよく言われました。

この「事実」というのが、たとえば、人間関係であれば「誰が、誰に、何をした」ということを表しています。
これが、「主体と客体」を表していまして、一対の概念といったのは、こういうことです。

■客観化して分析する


たとえば、「製品が売れない理由」を分析する課題があったとして、「製品の色がよくない」というコメントをネット上で発見した時に

 「お客様の評判として製品の色が良くない」

と報告してしまったら、上司や役員からどう言われるかは火を見るより明らかですね。
ましてや、「せっかくいい製品なのに、良さを理解してもらえない」などとは……。

だいぶ説明を省略しますが、この「主観と客観(主体と客体)」の概念においては、その対象となる問題をいかに客観化するかにかかっています。

 ある出来事に対して自分(問題の主人公)がどのように感じたか

はまず別のところにおいておいて、

 誰が見ても共通の事実はなにか

を明確にする必要があります。

これが「客観化」なのですが、厳密に考えていくと「客観」という状態は存在しません。

「散歩していたら猫がいた」は客観的事実かというと、極論すれば客観的ではありません。
「猫」と認識したのは、自分という主体が、そこにいた「もの」が「猫である」と認識したにすぎません。別の人が見たら「子ライオン」だったのかもしれないわけです。猫に似た置物だったのかもしれません。
ためしに、その「もの」が「猫である」証拠を考えてみてください。

 全身が体毛で覆われ、四足歩行している
 目が大きく、黒目が縦長
 全体に体が曲線的
 「みゃー」と鳴く

これをそれぞれに当てはまる別の動物を探すのはそれほど苦労しません。

まぁ、これは極端な例でなのですが、客体は主体の成立根拠にすぎないということです。
過去記事で事実と真実で書いたように、事実でさえ人によって見え方が違うということを考慮しながら、極力客観化をするように務めないと、「なに感想文を書いているんだ?」ということになりかねません。

まずは、ものごとを整理するときに、「主体と客体の対」に分け、その間で起こったことを、「主観と客観」で層別することが、説得力のある分析のための手法のひとつです。

■■時間と空間


よくある質問で「いつ、どこで」ということで、時間軸、空間軸の中でものごとを認識する(位置づける)事ができます。

これは哲学だけではなく、あらゆることを論じる上でのフレームワークみたいなものですね。
以前のシゴトTipsで「蟻の目、鳥の目、魚の目」というフレームワークを紹介したのですが、それがこの概念をちょっとだけイメージしやすい言葉にしたものです。

■時間


ものごとを認識する上で、この「時間」を正しく認識することが、ものごとそのものを認識することにつながるのは、私ごときがどうこういうまでもないですね。

時間の概念でもう一つ重要なのは「心理的時間」です。
まぁ簡単に言ってしまえば、物理的な時間と人間が感じる時間の長さには違いがあります。

ある「もの」を見て、それをどのように考えるのかの切り口として、「時間」という切り口は、「物理的時間」「心理的時間」の2つがあることに注意が必要です。

 私たちが認識する時間が意味をもつのは、自分にとって物事の順序をはっきりさせることができるからである。
 私たちは自分自身が行為したり、あるいは身の回りで何かが起こるとき、過ぎ去ったこと、いま現に起こっていること、これから起こりうることの三つに区別する傾向がある。

という時間概念があります。

これもものごとを認識するための重要な「ものさし」のひとつです。
 
ただ、時間も空間も、互いに依存するかたちで人間の感性を構築しますが、両者は同じものではありません。
時間は自己直観を与える形式、すなわち内官の形式であって、外官の形式である空間とは区別されます。

ちょっと難解なのですが、いわば時間は自分の内部で生じる物事の認識を整理する際に使われるのに対し、空間は自分の外で起こっている物事の認識を整理する際に使われるというふうに理解しています。
それゆえ、人間の内面の行為である認識という作業にとっては、時間のほうが空間より原理的な意味をもっているともいえます。

■空間


次に空間について。

空間とは、表象と表象の間の関係(人の認識した複数のものの位置関係)によって規定される、事物同士の相対的な秩序にすぎないそうです。
関係性としての空間概念とでもいいましようか。

つまり、「空間」とは、絶対的なものではなく、「あるもの」と「別のもの」の距離またはそれぞれの所属する空間の距離として認識されるんですね。

簡単な例で言えば、「国道1号線の混雑はひどいが、隣接する県道3号線はそれほどでもない」といった概念です。

これがどのように仕事に応用できるかというと、「問題がどういう空間で起こったのか」という点を見ることで、問題が起きたことに対する立体的な意味を表すことができるようになります。ここには物理概念と空間概念があります。

たとえば、最近海底火山が噴火して、島が出来ましたよね。

 http://www.asahi.com/articles/ASGCF5RPFGCFULBJ017.html

にニュースが載ってますが、説明で

 海上保安庁によると、新しくできた島の部分は今年10月16日時点で1・85平方キロ、発見当時の0・01平方キロから185倍になった。元の西之島の部分と合わせた島全体の面積は東京ドームの約40倍にあたる1・89平方キロで、噴火前の8・6倍という。

と書かれています。

この1.89平方キロというのが物理概念ですが、「東京ドームの約40倍」という空間概念が使われています。こっちのほうがわかりやすいのは、人間には「抽象的な空間認識」があるからだそうです。

■時間と空間


この2つの概念は、ものごとの全体像を捉えるのに最も原始的な手段です。

ただ両者の違いは、時間が順番に生じるものであるのに対し、空間とは同時に存在するものだという点でしよう。

したがって、同じモノサシでも性質が異なる以上、両方をうまく組み合わせて物事を考える必要があります。
時間だけでも不充分だし、空間だけでも不充分なのです。時間と空間の組み合わせによってはじめて、異なる事象が特定できるのです。


■■本質


本質とは「ものごとの正体」のことです。哲学の世界では「イデア」というそうです。
※別に「イデア」を知っていても仕事には役立ちませんが…

★――――――――――――――――――――――――――
イデアとは、哲学者プラトンの理論。 人間は洞窟の囚人のようなもので、背後からの光によって壁面に映し出された影を実存と思い込んでいるとし、真の実存は背後(イデア界)にこそあるという理論。

世界が絶えずうつろうのは影がゆらめくからであり、イデア界にあるその影の実体は不変の存在で、それこそが事物の正しい姿であるとします

同じものを見たとしても個々人が感じる印象は様々ですし、時間の経過によっても捉え方は変化していきます。

これはイデア界にある事物の不完全な模造を感覚で認識しているからであり、その事物の本来の姿は、理性・知性で認識できるイデア界にあるとされます。

洞窟の囚人は生まれながらにして洞窟の壁面(現象界)しか知らないため、自分が見ているものが世界の本当の姿だと認識します。
けれどそういった常識の枠から脱却して初めて真実を捉えることができるとし、現象界からイデア界へ魂を転換させることが、哲学を学ぶことだと言います。

宗派による差異はありますが、仏教においては「イデア界」≒「悟りの境地」、「魂の転換」≒「解脱」に相当するものと考えて良いでしょう。

なおこの語「イデア」は、「アイデア(Idea(英)、思想、概念、理念)、アイデアル(Ideal(英)、理想的な、想像上の、架空の)」の語源となっています。
 
http://tinyangel.jog.client.jp/Name/Idea.html より
――――――――――――――――――――――――――★


私達の目には、光を反射するものしか映りません。逆に言えば、光を反射しないものは見ることができないのです。イデアは、全てのものをあるがままに見る、本物の世界のことです。

だからと言って、それは仏陀でもない限りわからないでしょう。
だから、いろいろな側面を分析することを通して、イデアに近づく必要があるわけです。

■本質を定義する


私達が「物事の本質」という時には、その「ものごと」が自分を含めた関係者に及ぼす影響のことを考えています。

「会社が赤字になった」というのは、「非効率な組織」という本質的問題の表面化にすぎない、というように使います。

ただし、これを使うときは注意が必要で、

ある無意味な事象を意味づけしようとすると、過去記事「事実と真実」で書いたように、百人百様の解釈ができます。
したがって、考えるときには、「自分の定義する本質」を考えないといけませんが、他人に説明するときには、そこは明示せず、他人が同じ本質に気がつくように誘導する周辺事実や議論をしていく必要があります。

ここいらが、「コミュニケーション」の難しいところなのですが。

かなり哲学的なお話になってしまいましたが、自分の持っている結論(物事の本質)をしっかりさせておくと、分析や議論でブレるようなことが少なくなります。

■■運動


「運動」というのは時間の概念のところでちょっと説明しましたが、物理的な概念で言うと物体が時間変化にともなって場所を移すことですね。

つまり、先の「時間と空間」で書いたように、過去・現在・未来という3つの部分に分けるのではなく、過去から現在を通じて未来に向かう連続的な変化(=運動)として考えるということです。

■「QC七つ道具」


「QC七つ道具」をご存知でしょうか?

もしご存じなければ、以下のWikipediaを御覧ください。

★――――――――――――――――――――――――――
管理を行うにあたり、現象を数値的・定量的に分析するための技法。いずれも可視化によって、誰にでもすぐに問題点がわかったり説明を容易にすることを狙っている。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%93%81%E8%B3%AA%E7%AE%A1%E7%90%86#QC.E6.89.8B.E6.B3.95
――――――――――――――――――――――――――★


この中で「管理図」というものがあります。

ある特性を表すものを数値化し、それを時間軸上に折れ線グラフとして表したもので、代表的なものに Xbar-R 図などがあります。

これはある特性の時間という軸における運動を表したものです。

高校の数学で、「微分」を習った記憶があれば、あれを思い出してもらえるといいのですが、ある物事の変化を捉えるのに、時間で微分すると変化が分かりやすくなりますね。
こういうものが、ものの見方にも適用できるわけです。

たとえば、株価などで MACD というテクニカル指標があります。
あれは2つの移動平均の差を同じ時間軸上にプロットしたものなのですが、大きくなるとトレンドの変化が大きくなっていることを表すのにすごくわかりやすいチャートです。

■測定する


これを表すためには、「測定」が必要です。
グラフ化したいのに数字がなければグラフにはできませんから。

たとえば、「1日にメールを見ている時間」をグラフ化し、それを時間軸上でプロットしてトレンドを見ることによって、自分の業務の効率性の変化が理解できるようになるわけですね。
企業の業績も、「収益」単体で見るのではなく、「収益の変化」という時間軸上の運動として捉えることで、その企業の未来が予測できるようになるわけです(完璧ではないですが)。

このためにも、何かのものごとを分析するときには、

 特徴を数値化できないだろうか
 どういった軸上なら変化が捉えられるだろうか

ということに着目して考えてみるという視点が必要ですね。

運動とは言葉を変えれば、変化を見るということです。


■■弁証法・否定弁証法


本日は、弁証法と否定弁証法という2つの概念(ものの見方)をご紹介します。

■弁証法


これはヘーゲルを始祖とする論理で、ヘーゲルは『精神現象学』で、意識がより高次なものへと変化していくさまを描いていますし、『法の哲学』でも、権利や共同体が発展していく経過を切り取って論じています。

この根本にある理屈は、

★――――――――――――――――――――――――――
 ある命題(テーゼ)があるときに、対になる命題(アンチテーゼ)が存在し、それをともに生かしつつ共存させることによって、発展した統合命題(ジンテーゼ)が導き出せる
 全てのものは己のうちに矛盾を含んでおり、それによって必然的に己と対立するものを生み出す。生み出したものと生み出されたものは互いに対立しあうが(ここに優劣関係はない)、同時にまさにその対立によって互いに結びついている(相互媒介)。
 最後には二つがアウフヘーベン(止揚,揚棄)される。このアウフヘーベンは「否定の否定」であり、一見すると単なる二重否定すなわち肯定=正のようである。しかしアウフヘーベンにおいては、正のみならず、正に対立していた反もまた保存されているのである。ドイツ語のアウフヘーベンは「捨てる」(否定する)と「持ち上げる」(高める)という、互いに相反する二つの意味をもちあわせている。

 Wikipedia 弁証法
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%81%E8%A8%BC%E6%B3%95
――――――――――――――――――――――――――★


ということです。わかります?
私はいまだによくわかってませんが…。

ただ分かるのは、テーゼに対しては常にアンチテーゼが存在し、この2つはひとつの真理に内包されるものである、ということで、論理的視点の構築には常にアンチテーゼを受容性が必要だということです。
※もうちょっと簡単な言葉で説明できるといいのですが、私の力ではこのあたりが限界。

たとえて言うと、企業活動が健全に成長するためには、競合企業が必要だが、競合企業によってその企業活動を停止させられる(競争に負けて倒産する)ことも起こりうるわけです。つまり、この場合のテーゼは、「競合企業が必要」となり、アンチテーゼは、「競合企業による企業活動の停止」となります。

もうひとつたとえ話というか、小説の話を。

「銀英伝」でラインハルト・フォン・ローエングラムとヤン・ウェンリーが初めて会見した時に、ヤンが、ラインハルトから「臣下にならないか」と誘われて、民主主義のいいところを説明する場面があります。ラインハルトが「君は私に民主主義を説くのかね?」と聞くと、ヤンは「いえ、私はアンチテーゼを示しただけです」という場面があります。
ヤンは「民主主義こそ人類の究極の政体だ」と言っているわけではなく、このような弁証法の理論を使って、あらゆる制度は、あるテーゼとアンチテーゼを含んでいると言いたかったのかもしれませんね。

■否定弁証法(差異)


要は弁証法のところで述べたように、ものごとは2つの側面を持っています。これを分離して考えるべきだというのが、否定弁証法です。
ただ、否定弁証法というと、弁証法がよくわからないのに、さらにその否定というのがもう呪文の世界。

なので、単純に「差異を考える」という言葉にしてます。

相反するA案とB案があって、それぞれにいいところと悪いところがあったら、それを一つにまとめるとなんだかよくわからないC案が出来る、みたいな感じが弁証法で、「そんなC案はよくないでしょう」というのが否定弁証法と考えてます。

差異は差異のまま残しておくのがよくて、矛盾を解消しようとしても(ジンテーゼに達しようとしても達成できない)というのがポイント。

結構日本人には感覚的にわかりやすい理屈で、「そう無理して統一しなくてもいいじゃない」式な流れです。

論理を構成する上では、この差異を際だたせることによって、相互矛盾する命題にひねりを加えた結論(つまり統一しない統一)の論点を作ることができます。
ただ、説明が難しくて、聞く方も難解になりやすく、説得力という点ではよほど弁が立たないと難しいというのが私の個人的経験則。

■■構造


「木を見て森を見よ」というのが、論理的な説得力を高める手段です。

目の前の現象だけにとらわれていては、本質は見えてきません。
何事も、他のモノやコトとの関係の中で存在しているのです。

このそれぞれのモノやコトに対する関係性を「構造」と呼んでます。

もっというならば、あらゆるものごとは全体の中で存在している部分なのです。その全体は、構造と呼ぶことができます。したがって、いかにして構造を見抜けるかが、物事の本質をつかむうえで重要になってくるのです。

たとえば、サイコロを思い出してみてください。いま 5 の目が見ています。

ひとつづつの点があるのですが、ひとつづつの点は単なる点です。これが5つ集まって、5という目を表現しています。
つまり、黒い点自体が 5 を表すことはありませんが、その集合は、黒い点ひとつづつの集合ではなく、別の意味を持つ 5 という数字を表すことができるようになっています。

2つの事象だけで考えると、その構造はそれほど難しくはならないのですが、これが 3 つ、4 つ、5つ増えるにつれて、それぞれの関係性は非常に複雑なものになります。
たとえば、3つの場合は、それぞれの関係性を繋ぐと 3 本の線によって表されますが、4 つになれば、それぞれの関係性は 6 本の線が必要です。さらにこれらの関係性自体が、様々な側面や結びつきの強さみたいな太さや色がある線だと考えれば、複雑極まりないものになっていることは想像に難くありません。

すべての事象に関係性があるわけではありませんが、現実世界では相当複雑な関係があって、巡り巡って何かに影響をしているということが少なくありません。
こういうのを、きちんと表現できるような視点が、構造視点になります。

サイコロの例に戻ると、5 という数字は、全体の形の中での「点」の存在について論じないと欠落が生じます。
論理は理屈で構成されるので、欠落の指摘はすなわち論理破綻に繋がる可能性が高くなります。


■■因果関係・システム思考


■因果関係


因果関係というのは「原因と結果」ですね。

 ××が起きた
 ○○をした
 結果◎◎になった

というものごとの流れを示すことによって、論理を構成する方法です。

私がよく使う因果関係の書き方は、TOC で紹介されている「現状問題構造ツリー」です。

これは、考え方としては、ある現象は、別の現象の帰結(結果)になっており、その現象がさらに別の現象の原因になっているという概念です。
こうして原因をたどって行くと、根本的な原因にたどり着くことができるという理屈。

この「現状問題構造ツリー」は、その作成技術はわからなくても、原因と結果が1枚の図に表されるので、「これが根本的な原因です」というと納得してもらいやすい資料になります。

ただし、最近は「システム思考」とかも使われるようになり、「原因は結果を生み、結果は原因を生む」といった捉え方も提唱されてきています。

■システム思考


これは「学習する組織」でピーター・センゲが提唱した考え方(だと思う)で、まぁ要するに「因果はまわる」という考え方です。

たとえば、

 食糧難になる
   ↓
 食糧援助を受ける
   ↓
 食料の生産に対するモチベーションが下がる
   ↓
 食料生産が減る
   ↓
 食糧難になる

みたいにいくつかの要素が他の要素の強化をしてしまい、ある状態をどんどん強化するような仕掛けができてしまう状況を表しています。

「現状問題構造ツリー」でも、「ループする」という書き方ができるものの、こちらは基本的にはある「根本的な原因」があって、それを解決すれば多くの好ましくない現象は自然消滅するという理屈になりますが、システム思考では、ループしているので、「根本的な原因」があるわけではなく、相互に影響を及ぼしている状況を表すのに適切なツールです。

いずれの視点で見るかについては問題にもよりますが、多くの場合、突発的問題は因果関係、慢性的な問題や繰り返し発生する問題はシステム思考でみると適合する場合が多いようです。
キーは、「相互作用」の有無です。


■■蟻の目 ・鳥の目 ・魚の眼


■蟻の目 ・鳥の目 ・魚の眼


以前に「9つの目の交渉術」をご紹介しています。この記事では、これを交渉術として使う場合についてご紹介しましたが、ここでは応用用法ではなく、「基本的な視点」という意味で説明します。内容が一部重複する場合もありますが、基本原理としてご理解ください。

過去に説明してきた着目の仕方と重複する部分がありますが、私個人的にはなにかのモノ・コトを見るときに、まず最初に意識するのがこのキーワードです。

これは過去記事「9つの目の交渉術」で詳しく説明していますので、詳しくはこちらを参照していただきたいですが、

 ・蟻の目―ひとつひとつの要素に分解して細かく見る
 ・鳥の目―全体を一つのカタマリとして、それが含まれるものを大きく捉える(大局的)
 ・魚の目―(時間的、プロセス的な)流れを見る

ことで、そのモノ・コトを捉える見方をします。

これによって、基本的な3つの見方ができるようになります。

たとえば、ある商品があるとして、

 その商品について後輩に教えるときは、蟻の目で細かく見て、ひとつひとつの商品の特徴を説明していく。
 
 その商品をお客様に売り込むときには、お客様の業務活動におけるその商品の位置づけ(鳥の目)をみる。

 役員に説明するときには、いままでの商品自身や、売り方の違いを説明し、今後の活動を説明する(魚の目)

のように使い分けるようにしています。

もちろん、ある一面だけで見ようとすると、それ以外の見方を提示されてしまって困る場面が出てくるので、これまでに説明してきたような見方でいろいろな検討を加えおく必要があります。



■参考図書 『精神現象学




本書は、観念論の立場にたって意識から出発し、弁証法によって次々と発展を続けることによって現象の背後にある物自体を認識し、主観と客観が統合された絶対的精神になるまでの過程を段階的に記述したもの。
カントの認識と物自体との不一致という思想を超克し、ドイツ観念論の先行者であるフィヒテ、シェリングも批判した上で、ヘーゲル独自の理論を打ち立てた初めての著書である。難解をもって知られ、多くの哲学者に影響を与えた名著。





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精神現象学
著者 :G.W.F. ヘーゲル
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●関連 Web
 ヘーゲル 『精神現象学』 における疎外論と物象化論 (1)
 ヘーゲル『精神現象学』 「Ⅰ 感覚的確信」について - YouTube
 ヘーゲル「精神現象学」の要約

●本書を引用した記事
 嫌なことがあった時には、難解な本を読む
 ものの見方の10パターン07:弁証法・否定弁証法
 古典・名著のすすめ2―解説本の使い方


●関連図書
 ヘーゲル「精神現象学」入門
 超解読! はじめてのヘーゲル『精神現象学
 純粋理性批判
●このテーマの関連図書


ヘ-ゲル『
精神現象学』入門(講談社選書メチエ)

新しいヘーゲル(講談社現代新書)

超解読!はじめてのヘーゲル『
精神現象学』(講談社現代新書)

歴史哲学講義(上)(岩波文庫)

歴史哲学講義〈下〉(岩波文庫)

完全解読ヘーゲル『
精神現象学』(講談社選書メチエ)



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結構久しぶりですが、ビジネス書をご紹介します。図書名称:上司を上手に使って仕事を効率化する「部下力」のみがき方著者:新名史典いかにもサラリーマンに向けの本なので、読んだことがある方も見えるかも。私のブログでも時々引用させて頂いています。とくにポイントだと思うのは上司が仕事のボトルネックという点。仕事の効率を挙げるためには、上司をうまく巻き込んで行くことが重要。その点を「上司を上手に使う」と著者は表現しています。..

流れを見る3つの視点

以前の記事「9つの目の交渉術」の記事で、1.蟻の目ミクロの視点2.鳥の目マクロの視点3.魚の目フローの視点という3つの視点に基づく視野を持つことで、ものごと正確に見ることができる、というお話を書きました。本日は、「魚の眼フローの視点」を持つための思考方法をもうちょっと詳しく考えてみたいと思います。前後関係フローの視点というのは、ある出来事を時系列の中で捉えることです。たとえば、今日部長にえらく怒鳴られた。なんてことがあった時に、そりゃ失敗..

神様が決めてくれる

「あれをやるべきか、やらざるべきか。それが問題だ」なんて悩むことはありませんか?やる・やらない問題よく自己啓発書などにもあるように、やってみないとわからないことって多いですよね。でも、いざやろうとすると、もし「失敗したら」「うまく行かなかったら」と不安になったり、「でも難しいしなぁ」と後ろ向きになったりします。私の場合、最近悩んだのがNexus7の購入。「買っただけの効果が出せるんだろうか?」「もし無駄になったら2万円は痛いよなぁ」「きっとすぐに新し..

次の一手を考える

新年度になってもうすぐ二ヶ月ですね。六分の1が過ぎたことになります。会社でのことにしろ、会社外のことにしろ、今年の目標の進捗具合はいかがでしょうか?ちょうどキリがいいので、そろそろ進捗状況を整理してみてはいかがでしょうか?私は毎月第一土曜日は、今年やりたかったことの進捗状況をチェックして、次の一ヶ月のアクションを決める日にしてます。家にいるとつい、他のいらないことを考えてしまうので、朝から図書館の自習室に行ったり、出勤する人が少ない時には、会社に行ったりしてます。今週..

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洞察力が問題を解決する4

久しぶりにビジネス書の紹介。「洞察力」「観察力」みたいなものは、スキルとしてあるプロセスで学習すれば身につくというものではありませんね。しかし、それを身につけるまでのプロセスにはいくつかのパターンがあるようです。本日は、洞察力とはどのように発揮されるのか、それを組織としてどのように育てていくのかについて考察した一冊です。長文なので、分割しておお送りしています。本日は最終回。要約のパート3です。Pert3目には見え..