最近テレビを買い換えたのですが、テレビの売り場で見た時には、大して大きく感じなかったものの、実際に家に持ってくるとすごく大きい(場所をとる)事に気がついたりしました。

ふと思い出したのが、「知覚コントラスト」というキーワード。

思い返してみると、この「知覚コントラスト」って、交渉術のとても大きな技術のひとつです。


まあ、簡単に言ってしまえば

 10円のものから考えると100円というのは高い。
 10万円と10万100円を比べると別にどうということはない

というやつです。

 ・売り場という広い場所で、40型のテレビが並んでいるところに32型のテレビが置いてあると小さく見える。
 ・自宅という狭い場所に32型のテレビを置くと大きく見える。

たったそれだけのことです。

■知覚コントラストの交渉術


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たとえば、野球の試合では、打者がウオーミングアップの素振りの前に、バットにリング状のウエイトを取り付ける場面をよく見かけます。選手によると、重たいバットで繰り返しスイングをしておくと、ウエイトなしのバットが軽く感じられるとのことです。

この効果は、社会科学では知覚コントラストして知られる原理で説明することができます。

簡単にいうと、物の性質は周囲から孤立して認識されるわけではなく、ほかとの対比で認識されるということです。

たとえば、運動場で10Kgのウエイトを持ち上げるよう言われた場合、先に20Kgを持ち上げたあとならば軽く感じ、5Kgを持ち上げてからだと重く感じるはずです。10Kgのウエイトには変わりありませんが、それに対する知覚(感じ方)が違うのです。この心理的プロセスはウエイトに限ったことではなく、あらゆる判断について回ります。

どのような場合でもバターンは同じです。

つまり、最初の経験が、次の経験に対する知覚を決定するのです。

社会心理学者のザカリートーマラとリチャードペティは、この原理を応用してコントラスト効果が説得力にどう影響するかを実験で示しました。

具体的には、ある事柄について自分がもっていると思う情報の量が、ほかの事柄について得た情報にどう影響されるかを調べたのです。

実験参加者は、ブラウンズという架空のデパートを紹介するメッセージ(以ド、ターゲット・メッセージ)を読みますが、まずその前に、スミスという別の架空のデパートに関する同様のメッセージ(以下、先行メッセージ)を読まされます。

実験参加者が読んだターゲット・メッセージはすべて同じもの、ブラウンズの三つの売り場に関する内容でした。しかし、スミスに関する先行メッセージには、情報量が少ないもの(一つの売り場についてのみ)から、多いもの(六つの売り場について)まで、差をつけました。

すると、先行メッセージの情報はが多いと、ターゲット・メッセージは説得力に欠けると見なされてブラウンズに対する好感度は低くなり、先行メッセージの情報が少ない場合には、好感度は高くなりました。

要するに、実験参加者はスミスについてあまり知ることがでさなかったあとでは、ブランズについてよく分かったと感じ、その逆もまたしかりというわけです。まさにこれが、知覚コントラストの効果です。

ロバート・B・チャルディーニ(著) 『影響力の武器実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣
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■失敗を小さく見せるには大きな失敗を見せておく


たとえば、もしあなたが何かの失敗で100万円の損失を出してしまった時に、上司にいきなり「100万の損失を出しました」と言うのではなく、

 ・過去の1億円の損失(当然自分の失敗ではない)について話をする
 ・年間の部門の合計損失(数億円?)の話をする

などしてから、自分の損失について話をするのです。

いきなり話をすれば、上司が「何と比較するか」は上司にフリーハンドが与えられます。「さっき100円落とした」って考えていたら、「100万ミスりました」と言われたら、「この大馬鹿者!」となるでしょう。相手にフリーハンドを与えずに、こっそり思考の範囲を狭めてやることが交渉術の基本ですね。

こうして前フリしてやると、知覚コントラストが働き、大したことがないように受け取られます。
※}こういう例が簡単に出てくるところが、普段どんだけ失敗しているかよく分かる…}

人間は何かを認識するときに絶対値として評価することが出来ず、相対的にしか認識できない、ということを利用するわけ。

また、隣の部署に何かのお願いをするときにも同じことが使えます。

 「この部署の××における工数は○○○(とっても大きな数字)ですが、●●(とっても小さな数字)を下としても全体の工数に与える影響は小さなものです」
 
というふうに認識させればいいのです。

当然、こうするためには事前準備が必要です。どういう展開で話をするのかを考えておかないといけないわけですね。
ま、何事もそうですが。

値自体印象を変える方法もあります。こちらは数字を悪用するに書きましたので、こちらもどうぞ。

どっちの方法も、詐欺などにも使われる方法ですね。悪用厳禁で。



■参考図書 『影響力の武器実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣




人が「イエス」という仕組みを心理学を使って科学的に分析し、実際に応用可能なレベルにまで高めた本。
社会心理学者の口バート・ B ・チャルディーニ氏は、宗教や悪質なセールス、募金の勧誘、広告主などありとあらゆる「承諾誘導」の専門家の手口を研究し、彼らの手口は基本的に 6 つの力テゴリーに分類できることをつきとめた。心理学の専門書であるが、ビジネスからプライべートまでその応用範囲は極めて広い。
現在の心理学を応用した仕事術、交渉術、会話術などの本のほとんどすべてがこの本に書かれている。





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影響力の武器実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣
著者 :ロバート・B・チャルディーニ
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●関連 Web
 影響力の武器:なぜ、人は動かされるのか』の[第三版] - マインドマップ的読書感想文
 影響力の使い方講座 - ダイレクト出版
 影響力の武器とは?説得するときにはこれ - DCC用語集
 影響力の法則 影響力の武器 - YouTube
 影響力の武器:マネジャーとしての影響力は、どうすれば発揮できるのか?-Bizトレンド

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 面接質問:あなたはどのように反対意見を求めていますか?
 仕事で使える心理学1:詳細目次
 仕事で使える心理学4:ポイント抜粋―ストレスに対応する
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