仕事で上司から「×××の報告書を作りなさい」と指示されたり、メールでちょっと長文のメールを書くことがありますよね(以下、まとめて「報告書」といいます)。
この時に、わかりやすい報告書とそうでない報告書を見比べてみると、わかりやすい報告書にはいくつかの特徴があります。

 ・設問者が期待した答えがある
 ・だれに何をして欲しいのかが分かる


というポイントが押さえられています。

一気に書くと長文になってしまうので、「報告書に必須の4要素」シリーズとしてご紹介します。

最初に登場人物をご紹介しておきます。

 報告書: 報告書・メール・プレゼン資料などの文書
      場合により、口頭での報告なども含む
 報告者: 報告書などの文書を書く人(多くは部下)
 書き手: 報告者と同じ。文書を作ることを意識して使い分ける事があります。
 設問者: 報告者に文章を書くように指示した人
      (多くは上司・メールの発信者)
 設問 : 設問者が報告者に発した内容そのもの
 読み手: 報告書を読む人。設問者も含まれるが、報告書は多数の人が読む場合もある。

前回の記事で、報告書は最初に「問い」がある、と書きました。

本日は、その「問い」を「テーマ」として報告書にどのように展開していくのかについて、整理してみたいと思います。


■テーマ


時々、報告時に見かけるのが、テーマ選択自体が間違っている報告です。

前回の第1の要素「問い」に使った例題からもう一度考えてみることにします。

★――――――――――――――――――――――――――
 部長:製品Xの市場シェア向上策について報告してくれ
――――――――――――――――――――――――――★


ここでの「問い」が前回のように

★――――――――――――――――――――――――――
 ・製品Xの現在の市場シェアはどのような状況か?
 ・製品Xの現在の市場シェア低下の原因はなにか?
 ・製品Xの現在の市場シェア低下を食い止め、向上させるための施策はなにか?
 ・自分の部門でどのようなことがやれるのか?
 ・それは誰が、いつ、何をするべきなのか?
――――――――――――――――――――――――――★


だったとした時に、テーマは単純に「製品Xの市場シェア向上策」ではありません。

以前の記事でも書きましたが、「アクションを体言止めしてはいけない」んですよ。
「体言(名詞)止め」というのは便利なのですが、その意図するところがぼんやりしてしまいます。

同じことが「テーマ」についても言えます。

報告書やメール、果ては口頭での報告でも、「向上策」と言ってしまうと「策をどうするのか」という動詞の部分、すなわちアクションがごまかされてしまいます。
※すごく一般的な言い方をしてしまえば、なにかの「アクション」とは行動であって、行動というのは「動詞」でないと表せません。

だから、「問い」として、「向上策として誰が何をするべきなのか?」という「問い」がはっきりしたら、

 「製品Xの市場シェア向上策の次の活動を開始を促す」

とするのか、

 「製品Xの市場シェア向上策の効果推定をする」
 「シェア向上策をいつ始めるべきなのか」

のかを明確に表さないといけないというわけです。

「テーマ」とは、日本語にすれば「話の主題」。主題が明確にならなければ、首尾一貫した報告書にはなりません。

設問者が部長なら、おそらく

 その部門のリソースをいつ、どのように、どのくらい使えば、シェアの向上にどの程度貢献できるのか

が主たる設問のテーマでしょう(まあ、それぞれのシチュエーションに依存しますが)。現在のシェアがどうなのかはその前菜に過ぎません。

つまり、テーマは設問者の背景に当たる部分からくる、本来要求したかったことです。

■関連する記事

「…による」には2つの意味が存在する

論理的な文章を書く際に、気をつけている単語があります。「~によって」「による」「により」この単語が一つの段落や文節に2つ以上出てきたら、多分読まされる人は苦痛です。意味がわからなくなるから。「によって」を多用してはいけないこの「によって」という単語は結構便利な接続して、因果関係のある事象を結びつけるのに使用します。たとえば「AによってBの問題が発生した」みたいな文章です。ところがこれが多段接続する時があります。..

文章校正のためのセルフチェックリスト

私は、頭のなかで考えるのが不得手なので、いろいろなチェックリストを作って Excel に書き出していて、色んな場面でこのチェックリストを見ながら、抜け漏れがないかをチェックしています。メールなどでも、報告書を出すときにでも、読みやすい文章を書くために、普段から文章は一度書いてから推敲する時間をとるようにしています。そんなときに役に立つのもチェックリストです。これがあると、ちょっとした枝葉末節の部分にとらわれずに、効率的に..

「以下の通り」は使わない

複数の情報を書くときに、つい「以下の通り」って言葉を使いたくなります。実際にメールやレポートなどでよく見かけます。でも、これって冗長で、意味のない上に、「あとで説明するから」的な文章になってしまって、読みにくくなります。これを使わないように文章を構成すると、読みやすいスッキリした文章がかけると思っています。結構多用されているので、あまり気に留めていない人も少なくないみたいですが。説明は概要→詳細が基本『ロジカル..

お世辞も言わねばサラリーマンは務まらない

お世辞やゴマすりが人間組織の歴史からなくならないのは、それが効果があるからです。「お世辞で上司に取り入る」というとなんだか聞こえが悪いですが、上司にうまく取り入っていかないとサラリーマンとしては仕事が続けにくいです。上司に嫌われて、仕事がうまく行かなくなったという例は、枚挙にいとまがないですが、上司に好かれて仕事がしにくくなる、というのはたぶんそうそうありません(よほど持っているスキルとかけ離れた仕事を割り当てられない限り)。..

部下力のみがき方2:要約

結構久しぶりですが、ビジネス書をご紹介します。図書名称:上司を上手に使って仕事を効率化する「部下力」のみがき方著者:新名史典いかにもサラリーマンに向けの本なので、読んだことがある方も見えるかも。私のブログでも時々引用させて頂いています。とくにポイントだと思うのは上司が仕事のボトルネックという点。仕事の効率を挙げるためには、上司をうまく巻き込んで行くことが重要。その点を「上司を上手に使う」と著者は表現しています。..

アプリはいつも1つ

スマホやタブレットを使っていていつも思うのですが、PCで作業するより気が散らない(1つのアプリを操作している時間が長い)と思いませんか?私は、すぐにあれこれ気が散って、すぐにやっていたことと違うことを始めてしまって、なかなか一つのことを集中して仕上げるというのができないタチなので、こういうことが起きないようにちょっと工夫しています。以前の記事で紹介したデスクトップ付箋

■同じテーマの記事

筋トレはメンタルバロメータ

一度メンタルをやられると、もうそういうことがないようにかなり防衛的になります。ちょっと忙しいなと思ったら仕事量をセーブしたり、「それはできません」ってはっきり断るようになったり。ただ、気分の波とメンタルの状況ハンダっていうのは正しく見ようとすると結構難しいものです。「メンタル障害に注意しましょう」的なことは多くの会社では注意していることではあると思いますが、一般に会社が見ているのは、残業時間。でも残業時間が多いか少ないかで単純に..