「課長、この稟議書の決済を頂きたいのですが」
 「えっ? なにこれ? どういうこと?」
 「あの、以前メールした件なんですが…」
 「あれじゃぁ、わからないよ。もうちょっとちゃんと説明してよ」
 「(怒)………どうすればいいですか?」
 「どうもこうも、必要な関係者をあつめて、背景や今後の方針の合意をとるに決まってるだろう!」

なんていう会話をしたことがありませんか?
私は結構身に覚えがあります。

こうなると、もう決済はもらません。「わからないなら、稟議書を作る前に何かコメントしてよ…」とは思うものの、そうも言えずに、もう一度説明資料を用意して、打合せを設定することになります。その説明資料も課長の聞きたいことが書いてある資料だったらいいのですが、この会話では、課長が何を聞きたいと思っているかが、担当者にわかっているとは思えませんね。たぶん、もう一度作り直しになります。


ところが、別の人の場合。

 「課長、この稟議書の決済を頂きたいのですが」
 「あぁ、この件ね。わかった。しっかり頼むよ。」

こんな感じ。一瞬で終わり。

■仕事効率を高めても影響がない?


こんな辺鄙な記事を見つけられるくらいなので、あなたは「仕事の効率化」や「仕事術」にすごくまじめに取り組んで見える方だと思います。

ところが、実際、いろんな時間術や仕事の効率化をやってみるけど、忙しいのには変わりがない。理想としている「定時に帰る」なんてのはまだまだ遠い先。自己啓発もやってみたいけど、そんなことをやっている余裕もなく休日も出勤。なんて状態になってませんか。

一般に言われる「仕事術」「時間術」などのテクニックものは、実は大して効果がない場合があるんですね。


■上司とのコミュニケーション


仕事とは

  誰かが作った結果を受け取って
  その形をちょっと変えて
  誰かに渡す

のがサラリーマンの仕事の実態です。
時間術や仕事の効率化が影響するのは、この「受け取ったものの形を変える」という単なる作業なんですね。
その前後を挟んでいるのは、他の人とのコミュニケーションです。

その「誰か」の最たるものが上司です。

もしほかの部署や同僚から受け取ったものであっても、上司の許可無くやっていて、そのせいで上司からの指示に対応するのが遅れれば、「仕事が遅い!」とお目玉を食らうことになります。
会社という組織では、必ず上司の承認のもとで仕事をするのが当然です。つまり、上司の承認がとれなければ、仕事として認めてもらえないばかりか、評価を下げられる原因にもなりかねません。

ところがこの「上司の承認」を得るというのが、とても簡単に出来る人と、すごく行ったり来たりして大変そうな人が居ます。

冒頭の会話のように、「もうあとは決済(ハンコ)をもらうだけ」と思っていたら、差し戻しを食らって、泣く泣く休出して、同じような資料をいくつも作るはめになったりするような進め方をしていると、どんなに「一人でやる仕事」の効率を上げても、あなたの効率全体には大した影響をしなかったりします。

上司は、自分の指示していないことを部下がやっているのをすごく嫌います。例えそれが必要だとあとでわかったとしても、部下が勝手に他の部門と調整をして、あとで他の部門の人から、「こんなこともやってるんだ」みたいに言われると、メチャクチャ腹が立ちます。下手をすれば、上司の上司から「部下がやっている仕事も把握できないのか」と突っ込まれて冷や汗をかく場合だってあるでしょう。

仕事を円滑にすすめるためには、上司が自分の仕事を把握していて、いつでも自分の見方になってくれる状況を作り出しておく必要があるんです。
そのためには、イチにも2にも上司とのコミュニケーションが大切。

■上司との関係改善


調べてみると、案外こういったやり方をちゃんと説明してくれている本やセミナーって少ないんですね。

 上司に報告するときは上司の目線で報告しなさい

と言われますが、課長になったことがない人が課長の悩みをわかるわけではありません。
経験のないものはわかりようがないです。課長になったことがないから一般職なのであって、過去に課長になったことがあれば、よっぽどの失敗をして降格された人か、いまは部長の人だけ。そんな人がそこら中にいるわけがない。

■上司の目線を探す


上司の目線を身につけるのは、具体的にこれだけやればという方法はありません。
ただ言えるのは、

 上司の立場だったらどう行動するか

を考えること、です。例えば上司が課長なら、「もし自分が、この課の代表者なら、この問題はどうしようと考えるか?」を徹底して考えてみることです。

どうしても、その問題の担当者だと、「ここは課長に助けてほしい」とか「これは本来ウチの課の仕事じゃぁないので、隣の課で処理してほしい」とか考えるでしょう。

 「じゃぁあなたが課長だとしたら、何ができるか?」

と自分に聞いてみればいいです。

 「ここは課長に助けてほしい」にたいして、あなたという部下を「何をして助けますか?」
 その行動が、あなた以外の人にどのような影響を及ぼすでしょうか?

 「本来のウチのしごとじゃぁない」と部下が言ってきた時に、「隣の課の課長と交渉か…」と気が重くなりませんか?
 また、交渉はうまくいくと思いますか?

多くの「デキない部下」というのは、これを考えてません。

 それは自分の考えることじゃない

と思って考えることを放棄しています。
ある人にとって難しいことは、別の人にとっても難しいんです。ただ、それをスマートにやれるか壁に跳ね返されてしまうかの違いだけ。

そういう考え方をしている人は、あなたの上司はあなたの職位をあげようとは思わないでしょう。だって、それがやれてないんだから。

■次回に続く



相変わらず前置きが長くて、もうスペースがなくなっちゃいました。

 明日に続く...

明日は、上司の目線をどのように定着させて活用するかについて、ちょっと自分の経験から得られたノウハウを書こうと思います。

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