いろんなルールを作るけど、ルールがルールとして守られるのは、たぶんほんの一部です。
特にルールが賞罰に影響しないものだったり、イチゼロで判断できないようなものだったりすれば一層。
とくに、
「会議をして全員で決めたのに、結局何も変わらない」
なんてのは組織で動いているとよくあることです。
たとえば、「帰宅前に机の上を片付けて帰ろう」みたいなルールを決めたのに、1週間もすればもう元の木阿弥。
■なぜ決定事項が守られないか?
組織の状況や決定時の雰囲気、リーダーの存在などによっていろいろ変わってくるのですが、その原因のひとつに「社会的手抜き」と言われるものがあります。
詳しくは 社会的手抜き-Wikipediaを参照してもらえればわかりますが、要は「オレ一人くらい…」「今日くらい…」「このくらいなら…」ってやつです。
もうひとつ、よくある原因は、「コミットメント不足」。
結局その決定に、心から「そうだよな」と思わないので、上司や議長が正論を言えば黙って聞いているだけです。
誰も反対しないので決定とみなしただけ。
だれも積極的にやろうとは思ってないので、意識しているうちは決定事項を守りますが、すぐに意識の外に行ってしまいます。
■決定事項を個人のものにする
全員で決めたものは全員の責任です。しかし、行動するのはあくまでも個人なので、個人の責任要因が見える化されないかぎり、社会的手抜きが起こりますし、コミットメントしていないものに対しては責任感ももてません。
逆に言えば、この2つの要因を排除すると、守られる期間は長くなります。
ただし、相対的に長くなるだけで、永久にではありません。これを永久にするためには、「エスカレーション」が必要なのですが、これにふれだすとまとまりがなくなるので、今回は
社会的手抜き防止とコミットメント
についてのみ。
■社会的手抜き防止とコミットメント
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●手抜きを防止する方法
こうしてみると、社会的手抜きというのは、個人がモチべーションの高い人物か低い人物かに関係なく、人間すべにあてはまる普遍的現象だということがわかります。
集団になると、だれでも一人だけで取り組むときほどの努力量が発揮されないのです。でも、それでは組織としては困るわけです。せっかくの個人の力が十分発揮されないのですから。では、どうしたらよいのでしょうか。心理学者釘原直樹は、社会的手抜きの防止法として、つぎの 4 つをあげています。
・個人の貢献度がわかるようにする
・課題に対する自我関与度を高める
・他者に対する信頼感をもつ
・集団全体のパフォーマンスの変動についての情報が成員個々に与えられる
榎本博明(著) 『仕事で使える心理学』
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◆個人個人に課題を落とす
一番最初に書いてある「個人の貢献度がわかるようにする」というのが社会的手抜きを防止するのに非常によく効きます。
たとえば、冒頭の「帰宅時に机の上を片付ける」というルールがあったら、
毎朝課長が一番で出社して、個人個人の机の上をチェックして、その結果を公表する
とやれば、個人の状況が見える化されるので、手抜きをしにくくなります。
課長の負担は大きいですけどね。
「このくらいなら…」に対しては、たとえば、デスクマットを導入して、「デスクマットの上に何もおかれていないこと」などと明確な基準を設けます。こういう基準を決めたら、たとえペン1本であっても、「デスクマットの上にものがあった=×」にしないといけません。
◆コミットメントをさせる
二番めに書いてある「課題に対する自我関与度を高める」がコミットメントです。
単純に言ってしまえば、「私はやります」とひとりづつが全員の前で宣言させることです。
会議の場で、「帰宅時に机の上を片付ける」と決定したら、一人ひとりに「あなたはやってくれますか?」と聞いて「はい。やります」だけでも効果がありますし、もっと小さな行動なら「賛成の人は挙手をお願いします」でも効果があります。
この二つをするだけでも、スタートアップからいきなり「なし崩し」なんてことは防げます。
■会議の合意は他人のもの
たいていの、リーダーが主催する会議というのは、決定事項がリーダーの責任においてなされます。
なので、リーダーの目がなければ、やりたくないものになりがちです。
リーダーとしてはみんなで合意したつもりでも、参加者はそんな風には思ってません。
一般の参加者にとっては、上から落ちてくる命令に過ぎないんです。
それを参加者の責任にするためには、リーダーが「決定しました」と言って終わりではなく、「あなたの責任ですよ」ということを明確にしないと守られません。
■参考図書 『仕事で使える心理学』
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