自分の上司だったり、更にその上の人だけでなく、自分より職位が上の人の協力が得られないと仕事は順調に進みません。

「協力を得る」ことの前にかならずやっておかないといけないのが、職位が上の人に対する根回しです。

■驚かせてはいけない


何かの会議で、自分の所見を発表したり、プロジェクトの進捗状況を報告したりすることがあると思います。その時に、決済者だけでなく管理職、とくに発表者である自分より職位が上の人が「え!?そうだったの!?」みたいな反応をさせることは絶対にやってはいけないことのひとつです。それは発表者である自分のミスだと考えるべき問題です。

これには2つの意味があります。

ひとつは、聞く人のプライドを損ねることです。
管理職になれば、情報収集能力が高くて当たり前です。いろいろな小さな動きを見て、全体の方向性を判断したり、今後の予測を立てて行動しなければいけません。

しかし、大勢があつまる公式の場で、自分の知らないことが突然発表される事になれば、「え!?」ととなります。
これが、当たり前能力として要求される「情報収集能力が高い」という事を否定してしまうんですね。結局、「恥をかかされた」みたいに感じて、結構傷つくんです。

よく、他部門も参加する会議に上司と一緒に参加して、唐突に方針転換や進捗課題が出されたりすると、あとで、「どうして事前に報告しないんだ」と上司から怒られることがあります。もちろん、上司が全体の動きを見誤っていたという問題が大きいのですが、細かな動きは部下のほうが知っているはずなので、その細かな動きを報告してないことを責められるんですね。

これは、事前に検討しておきたいという上司の仕事に対する取り組み方もあるでしょうけど、「プライドが傷ついた」という側面もあります。

とくに指摘事項が自部門の問題だったりすればなおさらです。

もうひとつは、問題・課題を突然言われて、その場ですぐに何らかの発言や判断をしなければいけなくなるという問題です。
多くの人が集まる場で「次回までに検討して…」というのは、上司より職位が高い人がいれば言いにくいです。結局、その場で与えられた情報だけで、しっかりした分析もないまま判断・決定をすると、後になって別の情報が入った時に、方向転換をしにくくなるわけです。

このため、上位者は常に事前情報に気を配っているんですね。



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●関係者全員に事前報告する
 優れたビジネス・プレゼンテーションには、聞き手が初めて耳にすることが含まれていてはいけない。一堂に集める前に、クライアントのすべての関係者に調査結果をよく説明しておく。
読者のみなさんが、これから最終プレゼンテーションを始めるところだと想像していただきたい。
 :
 :(中略)
 :
事前連絡をするときは、成功を収めているコンサルタントもしくは会社の問題解決にあたる者としての基本ルールを思い出すことだ。

つまり、「適切な」答えを提供するだけでなく、その答えをクライアントに受け入れさせなければならない

これは、セールスマン精神だけで乗り切れることもあるが、妥協を余儀なくされることもある。

たとえば、ナニナニ部門の取締役であるボブのオフイスに行って、ナニナニを犠牲にしてナントカにもっと投資するのが解決策だと思う、と告げたとする。

ボブは喜ぶとは思えないが、それでも彼のオフイスにいるのが二人きりだと、自分の分析をじっくりと説明できる可能性はずっと大きい。

こうしたプロセスを経たあと、ナニナニ担当取締役は、納得しているかもしれないし(助かった、これで次の人に行ける)、こちらが提言を変更せざるを得なくなるような新たな事実を指摘してくるかもしれないし(こういうことは本当にある)、こちらの提言に変更を加えないかぎり承服しかねると言うかもしれない。

最後のケースでは、交渉することになる。小さな妥協であれば、受け入れて前に進むことだ。

要求が大きすぎる場合は、相手を回避する方法を考える必要がある。

もちろん、オフィスから出て行けと言われた場合は(あまりないが、なくはない)、問題は未解決のままで、その大きさはナニナニ担当取締役の社内での実力と比例する。

この項のはじめの場面に戻ってみよう。ただし今度は、あの厳しいナニナニ担当取締役も含め、並みいる経営幹部の面々にプレゼンテーションの内容を事前に説明してある。

あなたが話し始める。

 「われわれのチームは、何週間にもわたって徹底的に調査いたしました結果、わが社の将来のためにはナントカ製品の生産向け投資を今後二年間で七五%増やす必要があるという結論に至りました」

最初のスライドに移ろうとしたとき、ナニナニ担当取締役が口をはさむ。

 「その話は前に聞いたが、大ぼらだ。増やすのはナニナニの生産のほうだ」

最高財務責任者は、驚いたように眉を上げるが、何も言わない。

追加投資の資金調達方法を前もって示しておいたからだ。

ナントカ子会社のシニア・バイスプレジデントは、今日のプレゼンテーションの勝者は自分だということを知っているので、悠然と CEO のほうを見ている。

CEO は、椅子に身を沈め、両手の指で尖塔をかたち作りながら、ナニナニ担当取締役にこう言う。

 「ちょっと待ってくれないか、ボブ。こうしてみんな集まってるんだ。プレゼンテーションを先に進めて、終わってから話し合おうじゃないか」

その結果がどうなるかは、もうおわかりのことと思う。びっくりさせられるような結末は、避けるに越したことはない。

イーサン・M. ラジエル(著) 『マッキンゼー式 世界最強の仕事術
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■根回しです


結局何をしなければいけないかというと、会議の場では、自分より職位が上の人は必須、可能なら参加者全員に根回しをしておきましょう、ということです。

1対1で話している時には、驚くような情報や要求を出しても構いません。
その場では判断できないかもしれませんが、「ちょっと××について追加情報を持って来い」とかいえますので。

一方で、大勢が集まる場では、「知らない」というのは、その人の顔を潰すことになります。ですので、知らないことがないような事前通知が必用なんですね。

これを怠ると、会議で提案をひっくり返されたり、拒否されたりします。



■参考図書 『マッキンゼー式 世界最強の仕事術





立ち読みできます立ち読み可
本書は、2つの貴重な意味を持っている。ひとつは、これまで謎に包まれていた世界的なコンサルティング会社マッキンゼーの仕事や組織、経営について、その一端を明らかにしていること。つまり、マッキンゼーそのものがテーマになった本である点だ。もうひとつは、彼らがビジネス経営問題をどのように解決するかを書いていること。つまり、世界中から集められた、きわめて優秀な「仕事師」たちの思考やテクニックを教えてくれている点だ。著者はマッキンゼーで3年間働いた元社員。そこでの経験と、同社を退職した人々へのインタビューから本書を書き起こしている。

本書の主要部分は、ビジネスの問題をどう考え、解決に向けてどんな方法をとり、そして解決策をどう売り込むかという、実際に彼らがコンサルティングを進める手順に沿って展開されている。いわゆる「マッキンゼー式」の真髄は、その最初の段階の「事実に基づき」「厳密に構造化され」「仮説主導である」という3つの柱で示されている。なかでも、問題を構造的に把握して3つの項目に集約させるテクニックや、まず仮説を立て、証明や反証を重ねながら正答に導くプロセスは、ビジネス思考の究極のモデルになるものだろう。

一方で、チームの編成、リサーチ、ブレーンストーミングの各方法や、「売り込みをしないで売り込む方法」など、すぐに応用できる実践的なテクニックも数多く紹介されている。多忙を極めるCEOに30秒でプレゼンする「エレベーター・テスト」や、毎日1つチャートを作るといったユニークなトレーニングもある。また、彼らのストレス対処法やキャリアアップの方法などもスケッチされていて、彼らの「生身」の側面をうかがい知ることができよう。

マッキンゼーの人々の仕事に対する思考やテクニックが、見事に描き出された1冊である。一読すれば、ビジネスにおける強靭な精神と、すぐれた知性の源泉に触れた気になるはずだ。





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マッキンゼー式 世界最強の仕事術
著者 :イーサン・M. ラジエル
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