計画っていうのは、作った瞬間からどういうわけか遅れ始めます。
不思議ですね。

でもまぁ、その理由を考えているより、どうやって遅れを挽回するかがプロジェクトリーダにとっては大事なことです。
本日はそれのやり方のパターンをまとめておきます。

長期のプロジェクトや始まって間もないプロジェクトであれば取れる方法はたくさんありますが、プロジェクトが終盤になってくるとやれないことが多くなります。そんな時でもパニックにならないように、どのような選択肢があり、それを今回のプロジェクトに適用すると、どんなことをやればいいのか、そのメリット・デメリットを考えるベースにしてください。

まず、大枠に分けると

 1.期限を延ばす
 2.投下する工数を増やす
 3.必要工数を減らす
 4.効率を上げる

の4パターンに分かれます。

■大事なのは複合技


この中で、効果が高いのは、この番号順です。つまり、上から順に検討していかないといけないですが(意外と、逆から考える人が多い)、1つの方策でだけで、対策が完了することはありません。
つまりは、納期は延ばしてもらうけど、100%ではなく、残業もするし、効率化も検討するというようなやり方をしないといけません。

私の場合、以下に上げる細かいパターンも含めて、まずマインドマップに書きだして、さらにそれぞれの項目について、具体案と費用対効果を考えます。

その結果、もっとも費用対効果の高い組み合わせ(お互いにAをやればBは出来ないなどの制約があるので)を担当者に指示することになります。



■1.期限を延ばす


とりあえず手っ取り早いのがこの方法。
これは更にいくつかのパターンが存在します。

 ●すべての納期を延ばす
  まぁ要は、「すみませんが出来ないので、××まで待ってください」ということ。
  このためには、「じゃぁいつだったらできるのか」の回答に対する答えが必要です。

 ●分納にする
  プロジェクトの結果を納品する相手に迷惑がかからないように、一部だけは計画通りに提供して、その時点では必要ないような機能や部品の個数などをあとで納品するようにすること。
  特にソフトウエアプロジェクトだと、通常の機能は問題ないが、異常処理(イレギュラーな処理)は未実装、みたいな状態で納品することがあります。また部品であれば1万個治める予定を、1,000個だけにしてもらい、残りは1週間後とかに分けてしまいます。
  いずれにしても、リリース物を作る作業が2度手間になることはさけられないので、余計な業務は発生しますが。

当然、プロジェクトにはその結果を受けて活動する人がいるので、最終意思決定者と後工程の人に対して、ケア/合意が必要になります。

■2.投下する工数を増やす


こちらが一般によく取られる手ですがこちらも2通り。

 ●残業する
  ま、よくやるやつですね。(^^;

 ●人員を増やす
  あまりやれないですが、本当はこちらの方がいいです。特にプロジェクトの最初のほうなら、ぜひこれを検討するべきでしょう。
  ただし、増やしてもらう人員は、現在の担当者に対して同等かそれ以上が望ましいです。
  ただでさえあとからプロジェクトに参加すると、そのプロジェクト内部での合意事項や事前教育のために時間が取られます。つまり、余計な初期工数が発生するので、それをあとでカバーできるだけの力量を持った人でないと、崩壊する危険があるためです。
  もしプロジェクトが終盤にかかってくると、この作戦はとれません。後20人日というところで、新しいメンバーをいれたら、その教育に10人日、教育のために現在メンバーの工数が10人日と合わせて40人日必要になって、助かるどころか、足を引っ張られかねません。
  如何に早期の段階で遅延回復措置が取れるかは、プロジェクトマネージャーの腕の見せ所ですね。

■3.必要工数を減らす


これは要するに、「目標を下げる」ということです。
例えば、ソフト開発プロジェクトで、
 ・「詳細部分のドキュメントはつくらない」と決めて、ドキュメント化とそのレビューに関わる工数を減らす
 ・バグ曲線の収束率を99.8%から99%に下げる
 ・効果の低そうな機能を取りやめる(例えば、派手なスプラッシュはやめるとか)
など。

これも成果物に影響するので、最終意思決定者と後工程の人に対して、合意が必要になります。

■4.効率を上げる


ようするに、10人日かかる予定のものを、5人日で仕上げる方法を考えるなど、WBSにおけるひとつづつのタスクごとにそれを短縮して全体の時間短縮を図る方法です。

 ●能力の高い人に任せる
  極端な話、ド新人にまかせていた業務を、ベテランに振り替えるだけでプロジェクトは大きく進むようになります。
  もちろん、その時のド新人のモチベーション低下や、ベテランの負荷増大にはなりますが、背に腹は代えられない。

 ●手待ちち時間を減らす
  プロジェクトのWBSを作っているのであればわかると思いますが、ガントチャートに書かれた依存関係は実は今では関係なくなているかもしれません。こういったものを洗い出します。
  たとえば、タスクA,B,C,Dがあって、この順番にやらないと思ってたけど、実はA,BとC,Dの依存関係はあまり高くなとすれば、
  A,BとC,Dは実は並行して作業できるかもしれません。
  あるいは、建前としては「要件定義」が完了するまでは「機能設計」に入れませんが、すでに確定している部分については機能設計に入ってもいいはずです。もちろん、あとで影響する要件が変更になるかもしれず、ある程度のリスクは織り込まないといけなくなりますが。要は見切り発車できそうなところを探すこと。
  
  すべてを見直す必要はありません。着目しなければいけないのは、クリティカルパス上にあるタスクか、プロジェクトの律速になっているタスクパスを見なおせばいいです。

  ま、世の中で言われている「コンカレント・エンジニアリング」というかっこいい言葉で締めておきましょう(^^;

 ●作業プロセスを改善する
  プロジェクトの内部活動としてやっているような事柄を省略するという方法です。
  たとえば、全員集まってのレビューはやめて、メールでレビューをしてもらうというようなやり方で効率化できます。
  あるいは、全員参加の進捗ミーティングを、グループのリーダだけにしてみるとか。

  作業を取り決めているルールをちょっと変えてしまうわけです。これは社内基準があったりしますので、あくまでも暫定措置としての位置づけでないと、それ以降なし崩しになる危険があります。もちろん、成果物品質に影響しないようなら、その後は標準として使ってもいいとは思います。

■最後の手段


これは本当に最後の手段で、1週間以上かかるようなものには使えないですが、以前の記事

  プロジェクトを最短で終わらせる方法

があります。なるべくならそうなる前に、手を打ちましょう。

■同じテーマの記事

「…による」には2つの意味が存在する

論理的な文章を書く際に、気をつけている単語があります。「〜によって」「による」「により」この単語が一つの段落や文節に2つ以上出てきたら、多分読まされる人は苦痛です。意味がわからなくなるから。「によって」を多用してはいけないこの「によって」という単語は結構便利な接続して、因果関係のある事象を結びつけるのに使用します。たとえば「AによってBの問題が発生した」みたいな文章です。ところがこれが多段接続する時があります。「..

「教える」のではなく「シェアする」意識

よく言われることですが、何かに熟達したいと思ったら、だれにでもできる方法があります。他人に教えることです。ただ、どうもこの「教える」というのはハードルが高いです。つい、自分に「他人に教える程の知識があるのか」と疑問に思っちゃいますので。でも、実は誰にでもできることなんです。「教える」こと子供の頃に、「先生が生徒に教える」というイメージがついているので、ある程度熟達した人が、未熟な人に対してやる行為みたいな気がします。..

「以下の通り」は使わない

複数の情報を書くときに、つい「以下の通り」って言葉を使いたくなります。実際にメールやレポートなどでよく見かけます。でも、これって冗長で、意味のない上に、「あとで説明するから」的な文章になってしまって、読みにくくなります。これを使わないように文章を構成すると、読みやすいスッキリした文章がかけると思っています。結構多用されているので、あまり気に留めていない人も少なくないみたいですが。説明は概要→詳細が基本『ロジカル..

部下からの不平不満は上司の勲章

『課長のルール』という書籍から。部下に嫌われることを恐れるな誰だって人から嫌われたくはありません。部下とも末長く仲良くやっていきたいものなのですが、最近の若い世代は少々事情が許さなくなってきているようです。::(中略):おそらく部下に気を遣って気が引ける場面も多いことでしよう。しかし、部下に遠慮するのは絶対に禁物です(変に高圧的になってもだめですが)。さらにちよ..

少しだけの成功を積み重ねる

野球でいえばサヨナラ満塁ホームランなんて打てたらかっこいいですよね。シングルヒットを打つ(期待に応える)すべてができるわけではないのだから、しようとしないこと。すべきことだけを、きちんとする。ホームランを狙って、十打席のうち九打席で三振に終わるより、コンスタントに一塁に出るほうがずっといい。私がマッキンゼーに入ってまもなく、ニューヨーク支社で州北部のリゾ..

議事録は読み返すから意味がある

会社で会議をすると、会議ごとに議事録を作ってますよね。あれ活用されているのでしょうかね?エビデンスと周知のための議事録議事録には2つ目的があって、ひとつはエビデンス。つまり、だれが何を言ったのかの証拠です。あとで「言った、言わない」のトラブルになったり、決定事項の背景を会議に参加していない人にも通知する役目です。この目的であれば、会議に参加した人は議事録を見る必要はありません。その場にいたのでより詳しく知っているはずですから。逆に会議に参加していない人で何らかの影響..

社内研修の講師になる

別の記事でも書いてますが、人に教えるというのは最高の勉強方法です。ただし、隣の後輩に「あ〜君、ドラッカーのマネジメントについて教えてあげるよ」と言ったらなにが起きるか、まぁ想像がつきますよね。社内研修たぶん社内研修ってあるでしょう。社員だけを集めていろんなことを教える研修です。その講師は、内容によっては社外から招くこともあるとは思いますが、会社の実務に沿ってというとやっぱり社員を講師にするということも多いかと思います。その講師..

議事録は読み返すから意味がある

会社で会議をすると、会議ごとに議事録を作ってますよね。あれ活用されているのでしょうかね?エビデンスと周知のための議事録議事録には2つ目的があって、ひとつはエビデンス。つまり、だれが何を言ったのかの証拠です。あとで「言った、言わない」のトラブルになったり、決定事項の背景を会議に参加していない人にも通知する役目です。この目的であれば、会議に参加した人は議事録を見る必要はありません。その場にいたのでより詳しく知っているはずですから。逆に会議に参加していない人で何らかの影響..

議事録は読み返すから意味がある

会社で会議をすると、会議ごとに議事録を作ってますよね。あれ活用されているのでしょうかね?エビデンスと周知のための議事録議事録には2つ目的があって、ひとつはエビデンス。つまり、だれが何を言ったのかの証拠です。あとで「言った、言わない」のトラブルになったり、決定事項の背景を会議に参加していない人にも通知する役目です。この目的であれば、会議に参加した人は議事録を見る必要はありません。その場にいたのでより詳しく知っているはずですから。逆に会議に参加していない人で何らかの影響..

年上の部下は信用しても信頼してはいけない?

過去記事でも、「年上の部下」「年下の上司」について色々書きましたが、ちょっとおもしろい考え方が『課長のルール』という本に書いてありましたので共有。できる上司は部下を信頼しない「年上の部下」というのは、上司本人から見ても扱いにくいものではあります。だからといって、それがマネジメントできなければ、上司としての評価が落ちてしまいますので、なんとかしないといけないです。とくに昔のように年功序列がはっきりしていれば、そういうシチ..