■現状分析の手順

現状分析の手順は以前の記事で書きました。それを少し引用します。

★――――――――――――――――――――――――――

◆問題解決の7ステップ

問題解決他のための7ステップはまず大きく2つのステップに分けら
れます。

 ◆問題認識ステージ
 ◆課題対策ステージ

の2つ。

さらに問題認識には2つのステップがあって

 ◇問題設定ステップ
 ◇問題把握ステップ

にわかれます。

また、課題対策は5つのステップにわかれます。

 ◇課題設定ステップ
 ◇課題解決ステップ
 ◇総合評価ステップ
 ◇解決実行ステップ
 ◇結果評価ステップ

これらを順番にやっていくことで問題が解決できるわけです。
――――――――――――――――――――――――――★


今週は、問題解決の7ステップのうち、問題認識ステップについて焦点を当てます。
上記の問題認識ステージでも書きましたが

 ・事実に焦点を当てる
 ・細心に分析する

を徹底する必要があります。

■発生事実と非発生事実

ここでいう「事実」とは、

 ・起きていること
 ・起きていないこと

の2つを考える必要があります。

つまり、

 起きている原因を想定する
 その想定を裏付ける事実を集める

という事をやって原因が正しいかどうかを確認する必要があるのですが、人間は(多分みんな一緒だと思いますが、少なくとも私は)自分に都合のいい(仮説を証明しやすい)事実だけを集めてしまいます。
そうすると、「だから、オレの考えは正しいんだ」と思ってしまって、実は他にある問題を誘発している根本原因を見落としてしまいがちになります。

ですの、想定した原因や相矛盾するような事実も積極的に集めないと根本原因に辿りつけないのが普通です。

例えば、製品A,B,Cを作っているとして、製品Aの電源基板が故障したとき、「だから電源基板を作っている協力会社の不良流出だ」と決めつけてしまうと、製品Bも同じメーカが作っているにもかかわらず問題が起きていないという事実から目をそらしてしまうことになるわけです。

だから、類似の問題が他の所ではどうなのかを検証する必要があるわけ。

ここにMECEという考え方が出てきます。

「製品Aの電源基板が故障した」という事実に対して、「製品Bの電源基板は故障していない」という

 起きていない事実

を集めて、すべての情報を「もれなく、ダブりなく」集めることが必要なんですね。
同じ事は時系列についても言えます。

「今日問題が起きた」という発生事実に対して、「昨日までは起きてなかった」という非発生事実を探すわけです。

そうすると、その2つの事実の違いと2つの発生地点の環境の違いを考えれば、起きている原因にたどり着きやすいんです。

■2つの事実を整理する

以前の記事でも書いたように、速やかに、MECEに情報を集める事ができたら、ここから違いを考えます。

この時に使う手法が

  ・特性要因
  ・変化点

の2つ。特性要因図は「フィッシュボーンチャート(魚の骨)」として有名ですね。

 問題が起きた製品と問題が起きなかった製品の違いに着目する
 昨日と今日の違いに着目する

と問題の根本原因にたどり着きやすいです。

製品であれば、私がよく使うのはこのフィッシュボーンチャート。業務のプロセスであれば、TOCの現状問題構造ツリーをよく使います。


TOC手法に関して書きだすとすごく長くなるので、参考図書と私がこれを気に入っている点を上げておいて、今日は終わりにしたいと思います。

●アマゾンで見る

ゴールドラット博士の論理思考プロセス―TOCで最強の会社を創り出せ!

●楽天で見る


原書に当たろうと思う方は

●アマゾンで見る

ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス

●楽天で見る


をどうぞ。どちらも私は名作だと思ってます。

■良いことが重なると悪いことが起きる

この思考プロセスで目からウロコが落ちたのは、

 ・問題は単独では発生しない
 ・問題は2つの原因を持っている

というところ。
これからすっかりTOCの信者になりました。

問題は単独では発生しない

問題はある問題を発生させるような行為によって引き起こされます。
しかしながら、通常、その行為は、何か「良い結果を得ようとして行った」行為です。もともと悪意を持って何かをする場合は別物ですが、基本はその会社の同僚や製品に良い影響を出そうとして何かをするわけです。
それによって問題が引き起こされるというのは、その行為自体に問題があるわけではなく、その行為を引き起こす何かのトリガがあります。このトリガは仕事をしている人たちの何らかの共通認識であったり、会社組織としての要求であったりするわけです。

つまり、その根本的な原因になっている「もの」は、その他の同様の行為を引き起こしている事になります。
それによって、ひとつの原因から複数の現象が発生し、その複数の現象がまた別の現象を引き起こして、、、、と繰り返されて、目に見える問題として発生することになるので、異なる現象の問題が同時多発的に発生することになります。

…文章で説明するとわかりにくいですね。
ぜひ一度、現状問題構造ツリーのサンプルを見てみてください。
非常に簡単なサンプルがこちらにあります。

問題は2つの原因を持っている

このTOCを学ぶ前までは、すごく単純に

 原因 → 問題

のような図式で考えてました。つまり、ある問題にはたった一つの原因がある。
プログラムにバグを引き起こすのは、


と宣言するところを

unsigned intc;

と書いてしまった。という単純な構造。

ところが、多くの業務をする上でのプロセスというのは、非常に複雑なので、このプログラムのような単純な要因になるものではありません。その時に、

 ある事象とある行為が重なると問題が起きる
 ある行為とある行為が重なると問題が起きる

という考え方が、TOCにはあります。

例えば、「出張報告書の提出が遅い」という問題は、

  出張中に緊急案件メールが処理されていない
  出張報告書の提出は優先順位が高くない

という2つの問題があるために、出張後の出社時には、メール処理を優先してしまって出張報告書が送れるという悪い現象が起きるわけですね。

この場合、出張報告書を翌日提出を義務付ける指示を上司が出したとしても、「じゃぁ、今のプロジェクトに関する緊急案件は放置していいんですね?」といわれると上司としては黙らざるを得ません。
逆に緊急案件のメールがないとすれば、出張報告書を書く余裕があり、報告書の翌日提出も可能なわけです。しかし、出張中はあまり頻繁にメールは見ませんので、溜まったメールの中に緊急案件がないというのは誰も言えないわけですよね。
※それで、どちらも対策できずに普通は、「頑張ろうね」みたいにお茶を濁すことになる…。

つまり、2つの原因が同時に起きなければ、問題の現象は起きないという構造になります。

実際の会社の業務プロセスでは、これが3つ4つと要因が重なったり、同時に起きなくても個別の要因で問題が起きたり、色々なケースやパターンが発生して非常に複雑なわけです。

これを単純化して「見える化」できるのが、この現状問題構造ツリー(略してCRTといいます)です。

これは非常に強力なツリーなので、もしまだ使いこなせないかたは、講習会に参加するなど練習の場を踏むといいと思います。オススメ。

◆このテーマのおすすめ図書

intc;

君たちはどう生きるか

仕事を「一歩先」へ進める力!:できないまま終わらない45のコツ

すっきりわかる!超解「哲学名著」事典

■関連する記事

時間つぶしの時間

前の会議が早く終わった、電車が来るまでちょっと時間があるなどのときにどんなことをしていますか?このブログに訪問してくださった方なら、おそらく「時間管理」をきちんとして、仕事においてより効率よく高い成果を出したいと考えて見えることでしょう。ところが、スキマ時間によく使うスマホなどにアクセスロガーを入れてみて、実際にどんなことをしているかと測定してみると、愕然とします。「2ちゃんねる」などのネット掲示板を眺めているぼんやり動画を..

問題認識の手法5―問題を発見する

もう金曜日ですね。ようやく今週の本題にたどり着きました。問題発見の問題以前の記事問題解決のための7ステップでも書きましたように、問題を正確に捉え、その根本原因にたどり着ければ後は技術的問題も多いのですが、多くの場合、この問題認識で失敗します。その理由として考えられるのが、・あるべき姿が的確に描けない。・現状の認識力と分析力が低く、正確に把握できていない。・ギャップの構造を解明することができないため、問題の本質に迫れない..

問題認識の手法4―現状分析2

現状分析の手順現状分析の手順は以前の記事で書きました。それを少し引用します。問題解決の7ステップ問題解決他のための7ステップはまず大きく2つのステップに分けられます。問題認識ステージ課題対策ステージの2つ。さらに問題認識には2つのステップがあって問題設定ステップ問題把握ステップにわかれます。また、課題対策は5つのステップ..

問題認識の手法3―現状分析

本日は、問題解決の手法の3回目。第2回めで「見える化」についてお送りしましたが、実は問題解決のプロセスを時系列で並べると、こちらが先です。ただ、今回問題認識の手法というテーマで書いていますので、話の流れの都合上、問題を顕在化することを先に持ってきてしまいました。ですので、この記事を読んでもう一度前回の「見える化」に戻って読み返していただけると、この記事の内容が理解しやすいかもしれません。現状分析手法現状分析はパターンがあります。..

問題認識の手法2―可視化する

本日は問題解決の手法の第2回をお送りします。可視化とはよく製造現場で使われる言葉に「見える化」という言葉があります。デジタル大辞泉によるとhttp://kotobank.jp/word/%E8%A6%8B%E3%81%88%E3%82%8B%E5%8C%961 「可視化1」に同じ。「大気の流れをする」2 (特に企業活動で)業務の流れを映像・グラフ・図表・数値化によってだれにも分かるように表すこと。問題の共有・改..

問題認識の手法1―問題と課題

問題解決のプロセス以前の記事で問題解決のための7ステップという記事を書きました。問題解決の7ステップ問題解決他のための7ステップはまず大きく2つのステップに分けられます。問題認識ステージ課題対策ステージの2つ。さらに問題認識には2つのステップがあって問題設定ステップ問題把握ステップにわかれます。また、課題対策は5つのステップにわかれます。課題設定ステップ課題解決ステップ総合評価ステッ..

問題解決の7ステップ3

昨日の記事で問題が発生してから解決するまで、大きく7つのステップがあり、大きく問題認識ステージ課題対策ステージに分けられると説明しました。本日はこの第2のステージ課題対策ステージの2回目。課題対策ステージ課題対策ステージは以下の5つにわかれました。課題設定ステップ課題解決ステップ総合評価ステップ解決実行ステップ結果評価ステップ本日は、最後の3つについて書きたいと思います。総合評価ステップ総合評価ステップでは、最初に作った問題の相関図「..

問題解決の7ステップ1

問題が発生してから解決するまで、大きく7つのステップがあります。いま自分がどのようなステージにあるのか、これを把握しておくと、次の行動が決めやすいです。これらは常に意識しておかないと、つい目の前のドタバタに引きづられてしまいますが、逆に意識的にできると、「先が読める奴」という評判をもらうことができます。でも実は大したことはやってなくて、この問題に対する対応がこの先どうなっていくかのテンプレートを持っているだけなんですね。問題解決の7ステップ問題解決他のための7ステッ..

目標は自分だけが管理できる

目標管理目標管理を採用している組織は多い。しかし、真の自己管理を伴う目標管理を実現しているところは少ない。自己目標管理は、ス口ーガン、手法、針に終わってはならない。原則としなければならない。P.F.ドラッガー著『マネジメント』ドラッガーは各種の著作で、以下のように述べています。知的労働者は第三者が管理・監督するこ..

問題解決を妨げるもの

問題解決には技術が必要です。その技術については、以前の記事問題解決の7ステップ1問題解決の7ステップ2問題解決の7ステップ3問題認識の手法1問題と課題問題認識の手法2可視化する問題認識の手法3現状分析問題認識の手法4現状分析2問題認識の手法5問題を発見する問題・課題・懸念事項などで書いてますので、よろしければご参照ください。ただ、上記で紹介したような技術を用いても解決できないものがあります。問題や課..

ドラッカー365の金言:組織の精神はトップから生まれる

本日の巨人:P.F.ドラッカー本日のお言葉:組織の精神はトップから生まれるお言葉の出典:『ドラッカー365の金言』ドラッカーの『マネジメント』から、「リーダーの真摯さ」のお言葉。この文章は、『ドラッカー365の金言』から引用しました。組織の精神はトップから生まれる。真摯さを絶対視して、はじめてマネジメントの真剣さが示される。それはまず人事に表れる。リーダーシップが発揮..

■同じテーマの記事

問題解決の7ステップ2

昨日の記事で問題が発生してから解決するまで、大きく7つのステップがあり、大きく問題認識ステージ課題対策ステージに分けられると説明しました。本日はこの第2のステージ課題対策ステージについて説明します。ただ、ちょっと長文になってしまったので、このステージも2回に分けてお送りします。課題対策ステージ課題対策ステージは以下の5つにわかれました。課題設定ステップ課題解決ステップ総合評価ステップ解決実行ステップ結果評価ステップ本日はこの内最初の2つに..